「目が離せない」繊細なクラゲ、飼育員の奮闘 餌は直接口元に

西日本新聞 もっと九州面 平山 成美

展示種が九州一の「海きらら」

 展示するクラゲの種類が九州で最も多い長崎県佐世保市の九十九島水族館「海きらら」。飼育しているクラゲは全て九十九島の海に生息しており、他の水族館では見られない希少種もいる。展示室の裏側を取材すると、繊細なクラゲを相手に、飼育員が神経をすり減らすような作業をこなしていた。

 海きららで展示しているクラゲは8月時点で20種。傘の直径は最大25センチ、小さいものはわずか5ミリ。研究室の水槽やビーカーでも約40種を飼育しており、国内で初めて九十九島で発見されたホシヤスジクラゲ、新種のワタゲクラゲなど、ここでしか見られないクラゲもいる。

 飼育員の朝は60個近くある水槽やビーカーの水温計測から始まる。クラゲの種類によって、適温は10度から30度の間で異なる。

 主な餌はプランクトンの一種のアルテミアで、生きたまま与える。冷凍シラスを解凍し、消化を助けるために包丁でミンチにして食べさせる場合もある。

 クラゲは餌を追って動くことがない。生きたアルテミアは水中で近づいてきたらおのずと食べるが、シラスは飼育員が水槽に手を突っ込み、1匹ずつ口元へ運んであげる。約70匹を飼育するミズクラゲの水槽は、餌やりだけでかなりの手間がかかる。

 きれいな水を保つのも一苦労。小さなクラゲは吸い込まれる危険のあるろ過器が使えないので、スポイトで吸い上げ、別の水槽やビーカーに移し替えている。

 クラゲの調査や採取も大事な仕事だ。佐世保市と隣の平戸市の定点で月6回、海きららのそばで月1回。飼育員が海で地道な調査を重ねないと、クラゲの生息実態はつかめない。

 8月22日は海きららに隣接するマリーナへ。満潮で水温は30度。飼育員は網やひしゃくを使い、タコクラゲ11匹を採取した。クラゲは傘に空気が入ると乾燥して弱ってしまうので、空気が入らないように、慎重にすくい上げていた。

 プラスチック製の容器に入れたタコクラゲの周りには、体長数ミリのクラゲもいるようだが、素人目には分からない。飼育員はライトを当て、わずかな動きや形から次々と見つけ、顕微鏡を使って種類を確認した。

 九十九島で生息が確認されたクラゲは100種以上だが、種類が分かっていないのも同じくらいある。すぐに特定できない場合は、研究室のデータを参考に卵巣や精巣、口、触手の形などを調べるという。

 海きららのクラゲチームは、飼育1年目の若手から25年のベテランまで4人。昨年末と今年1月、着手から3年かけてウリクラゲの繁殖に成功した。クラゲの寿命は3~6カ月だが、繁殖が安定すれば、特定の時季にしか見られないクラゲを通年で展示できる。

 クラゲファンや子どもたちがじっと見つめる水槽の向こうで、細かな作業に集中する飼育員たち。飼育歴8年目の野添裕一さん(36)は「目が疲れやすい」と笑いながら語った。

 「一時も目が離せない小さな子どもを育てているようなものです」  (平山成美)

 九十九島水族館「海きらら」 第三セクター「させぼパール・シー」が運営する九十九島パールシーリゾート(長崎県佐世保市鹿子前町)の中にあり、九十九島に生息する生き物を中心に展示。ほかにイルカやウミガメ、カブトガニなども飼育している。リゾート内には遊覧船やシーカヤック体験などもあり、九十九島の海を満喫できる。

 海きららの入館料は高校生以上1470円、4歳~中学生730円、3歳以下は無料。年中無休で、営業時間は3~10月が午前9時~午後6時、11~2月は午前9時~午後5時。海きらら=0956(28)4187。

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