「亡き妻に届け」思い出のスケッチ2000枚 香春町の79歳、個展目指す

西日本新聞 筑豊版 中川 次郎

「コロナ落ち着けば個展を」

 福岡県香春町の画家田中操さん(79)が亡き妻邦子さん(享年72)のために、昨年5月から描いた香春岳のスケッチが2千枚を突破した。香春岳は邦子さんとともに眺めた思い出深い風景。田中さんは消化器系の病気を患い、食事制限や通院しながら描き続けている。「妻のいる天国へ持って行きたいと思っているが、コロナが落ち着いたら個展を開き、妻が好きだった香春岳を見てほしい」と話している。

 田中さんは小6のとき、食道が閉まり、食べ物が胃に入らなくなる「噴門障害」を患い、手術や入退院を繰り返す生活を余儀なくされた。25歳で結婚した看護師の邦子さんが闘病生活を支えたが2001年、血糖値が急激に上下する重度のダンピング症候群も発症した。度重なる病気に心が折れそうな時、支えになったのは絵だった。

 旧国鉄職員だった30歳の時、「最後のヤマの画家」として知られる田川市出身の故石井利秋氏の作品を見たことを機に、「生きる力をもらった。私も絵を描きたい」と石井氏の門下に入った。治療を続けながら、筑豊の風景などを描いた。

 香春岳を中心に描こうとしたきっかけは、邦子さんのがんが発覚したこと。症状が重いことも分かったため、「思い出を作ろう」と2012年ごろから、夫婦で好きだった香春岳を「2人で描こう」と決めた。

 邦子さんの運転で香春岳が見える各地を訪れ、写真のL判サイズの紙に鉛筆やボールペンで下絵。主に自宅で、水彩絵の具を使って色を付けた。13年6月上旬に目標の千枚に達し、個展を開いたが、同年12月、邦子さんは亡くなった。

 1人暮らしの生活でも絵を描き続けており、平成から令和になることを機に、19年5月1日から再び香春岳を一から描いた。「さらに妻に捧げたい」と、同年12月の七回忌に約500枚を仏壇に供えた。その後、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、外出自粛となる中、好きなスケッチを続ることにした。

 コロナ禍の中、人の迷惑になってはならないと、香春岳が見える田川市の二本煙突や飯塚市などにも足を運んで写真を撮り、自宅で描いた。気づけば今年8月5日には2千枚となった。その絵は田川市糒から見た香春岳で、彦山川も書き込んだ。9月1日現在、2153枚になった。

 田中さんは「見る場所から、景色が変わるので、同じ絵は一つもない。体が動く限り、香春岳の姿を描いていきたい。妻もきっと喜んでくれるだろう」と話している。

(中川次郎)

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