ある小説に、福岡とおぼしき街を旅行で訪れた男女のこんな会話が…

西日本新聞 オピニオン面

 ある小説に、福岡とおぼしき街を旅行で訪れた男女のこんな会話があった。男「ここはかなり物騒な県らしいから、気を付けた方がいいよ。発砲事件とか多いらしい」。女「そうなの? でもそんなのどこの県も一緒だよ。ほら、こないだ隣の県でも…」

▼物語には後に「隣の県の通り魔」が登場する。あえて「物騒な」と言わせたのは、あくまでもその伏線だろう。2人はそれから福岡の名所巡りを堪能するのだから

▼とはいえ、福岡市民としては「そうなの? そんなことないよ」と作者に反論したくなった。けれど、その言葉が喉に引っ掛かるような事件が、現実に

▼買い物客らでにぎわう福岡の新名所の大型商業施設で、若い女性が刺殺され、現場で包丁を持っていた少年が逮捕された。少年は血の付いた包丁を握って施設内を歩き回り、その場にいた女児にも襲い掛かって馬乗りになった

▼駆け付けた客や警備員が少年を取り押さえ、幸い女児は無事だった。近くに幼児を抱いた母親もいたという。もしも、と想像するだけで背筋が凍る。被害者や遺族の悲しみや怒り、女児や現場にいた人たちの恐怖は察するに余りある

▼少年は少年院から県内の更生保護施設に移り、事件前日にそこからいなくなったそうだ。まだ15歳。どんな事情を抱えていたのか分からないが、何のために、どんな気持ちで通り魔のように人を襲ったのか。心の闇に光を当てたい。

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