「自分の命は自分で守る」小学校の防災副読本、家庭や地域でも活用を

新局面 災害の時代―後悔しない備え(22)

 9月1日が「防災の日」となったのは、1923年の関東大震災がきっかけでした。直下型地震で、木造住宅密集地の大火災がよく知られていますが、主に神奈川、千葉県沿岸で最高約9メートルの津波の被害があったのはご存じでしょうか。

 九州では、福岡県は福岡県西方沖地震が起きた3月に防災訓練を、熊本県では熊本地震があった4月や、それ以外の時期に抜き打ちでも訓練をしているようです。首都圏以外にはなじみの薄い「防災の日」になりつつあるようなので、東京で9月1日に、研究者も交えて行う総合防災訓練の一端を、ご紹介します。

 東京大学地震研究所在職中に私の上司だった測地学者は、首都直下地震を含め東海地震の前兆現象を判定する、政府の「地震防災対策強化地域判定会」の委員でした。委員は基本的に自宅から気象庁まで1時間で到着する決まりで、神奈川のご自宅からパトカーの送迎でぎりぎり1時間。「9月1日の訓練がまるで犯罪者の護送のようで、近所の手前、恥ずかしい」とおっしゃっていました。その判定を基に首相をトップとする訓練が始まります。

 現代の科学では地震の直前予知はできません。政府も2017年、東海地震の「確度の高い予測はできない」と認めつつ、検討対象を南海トラフ地震に変更し判定会を継続しました。そのため意味がない継続だと言う地震学者もいます。

 本年度、私は福岡県の小学校高学年用の防災教育副読本『命をまもる‼ガイドブック』地震・津波編の編集委員をしています。

 第1回の委員会が8月20日、県庁で開かれました。委員は専門家のほか学校の校長やPTA会長、メディアからとバラエティーに富み、男女比のバランスがとても良いです。誰でも意見を言える明るい雰囲気となるよう県庁の方々が運営してくださり、男女共同参画推進担当の大学教員としてうれしく思っています。

 専門家として、まず着目するのは福岡市の天神付近を通る警固断層帯です。海側にも延びていて複雑で、海岸の埋め立て地の下にも断層が通っています。博多湾内の海底地層調査で数千年前の0・4~1・2メートルの上下動変位が見られ、小さな津波が起きた可能性がありますが不確定です。

 個人的には、福岡における最悪のシナリオは関東大震災と同様に、繁華街で直下型地震と火災、近地津波が起きる―という想定だと考えます。南海トラフの場合、福岡には距離があり、避難時間はあるからです。地震に高潮や台風、河川堤防決壊が重なるなど、九州ならではの複合災害リスクを考える必要もあります。

 風水害編の副読本は既に出版され、県内の全小学校に50部ずつ配布されています。私は風水害編の委員ではなかったのですが、とてもよく考えて作られています。地震・津波編は来年3月に完成予定です。ご家庭や地域の防災にぜひ活用してください。 (九大准教授)

 ◆備えのポイント 福岡県の防災教育副読本・風水害編は、県のホームページから無料でダウンロードできます。https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/bousai-hukudokuhon.html

 ◆すぎもと・めぐみ 京都府生まれ。京都大大学院修了。東京大地震研究所特任研究員などを経て、2014年度から九州大助教、20年度から准教授(男女共同参画推進室)。専門は防災教育、災害リスクマネジメント。在インドネシア日本国大使館経済班員として2004年スマトラ沖津波の復興と防災に携わる。「九州大学平成29年7月九州北部豪雨災害調査・復旧・復興支援団」メンバーとして福岡県防災賞(知事賞)受賞。編著に「九州の防災 熊本地震からあなたの身の守り方を学ぶ」。

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