作家の中島らもさんは銀行で預金を引き出すとき、つい「卑屈な態度」に…

西日本新聞 オピニオン面

 作家の中島らもさんは銀行で預金を引き出すとき、つい「卑屈な態度」になっている自分を発見するそうだ。名前が呼ばれ、お金を受け取ると「ありがとうごぜいますだ」と言ってしまいそうになる、とか

▼一方で、お金を「預ける」という言い方は誤り、あれはわれわれが「貸してやってる」。銀行はそれをまた貸しして利ざやを稼ぐ。だから「九時から午後三時までに『取りにこない』とお金は返しません、というのは無礼な話」「借りている側がカステラのひとつも下げて返しにくるべきです」と

▼これも中島さん流なら「無礼な話」か。みずほ銀行が来年から新規口座で紙の通帳を作る際、1100円(税込み)の手数料を取るという

▼スマホやパソコンで出入金を管理する「デジタル通帳」に移行して経費削減を図る。ネットバンキングは便利だし、超低金利で銀行経営も苦しいようだが、紙の通帳がないのは何となく心もとない

▼机の奥に使用済みの通帳がたくさん残っている。古い通帳を開いてみると、数字の向こうに当時の記憶がよみがえる。月々の積み立ては子どもの学資。大きな金額は思い切って組んだ住宅ローンの頭金

▼1人暮らしして初めて持った通帳に、毎月律義に並ぶ数字は故郷からの仕送りだった。家計をやりくりしてくれた親の顔が浮かぶ。人それぞれの通帳に、それぞれの「自分史」。デジタルに変換できないぬくもりもある。

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