ベーコン、生ハム…老舗の味復活 3年前廃業 64歳親族が修業し再現

西日本新聞 筑後版 平峰 麻由

 「新しい夢見つけた」久留米の松尾ハム

 福岡県久留米市日吉町の一角に1915年に創業し、2017年12月に惜しまれながら廃業した老舗「松尾ハム製造所」が来月、上津町に復活する。伝統の味を後世に残そうと立ち上がった、松尾家の親族である林之寛さん(64)は、「この年になって新しい夢を見つけた」と目を輝かせている。

 林さんによると、松尾ハムはもともと長崎に店を構えていたが、第1次世界大戦中に久留米市にドイツ人の俘虜(ふりょ)(捕虜)収容所が設置されたのを機に移転した。「ドイツ人捕虜の中にはハムやベーコンの製法に詳しい人もおり、本場の作り方を教わっていたそうだ」と林さん。市の俘虜収容所に関する報告書には、松尾ハムが収容所にハムやベーコンを納品していたとの記載がある。戦後は一般市民にも販売され、当時珍しかった味は市民の心をつかみ長らく愛された。

 工場長として半世紀以上にわたって製造を支えた親族の松尾俊之さん(77)が腰を痛めるなど、従業員の高齢化が深刻化したことから、廃業が決まった。

 一方、林さんは妹が俊之さんと結婚したことで松尾ハムを知った。「始めて食べた時は、おいしさに衝撃を受けた。それからずっと松尾ハムのファン」という。自身は久留米市出身で、歯科技工士を経て大阪で歯科関係の人材紹介会社を起業した。2年前に退職し「第二の人生」を考えていた時、すでに廃業していた松尾ハムが思い浮かんだ。

 「このまま誰も何もしなければ、あの味は永遠に消えてしまう」。松尾ハムへの思いと経営の経験がある自分なら松尾ハムを復活できると、腹をくくって帰郷した。しかし、ハムやベーコン作りは未経験。廃業後は機材も処分されており、完全にゼロからのスタート。俊之さんから技術指導を受けながら、伝統の味を再現する“修業”が始まった。

 復活するメニューは、ロースハム、ベーコン、生ハム、スモークチキン、焼き豚の5種類。従来のメニューから自分が再現できるものを厳選した。

 松尾ハムのおいしさは、手作りならではの肉の食感と、ほどよい塩加減だ。そのためにこだわるのが、2週間ほどかけて塩漬けする長時間熟成。代々受け継がれるチップを使った薫製作業も味の決め手となる。俊之さんのアドバイスと、自分の舌を頼りに試行錯誤を続ける。「次の跡取りが見つかるまで、自分がこの味を後世につなぐ」。オープンは10月20日だ。 (平峰麻由)

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