『君の膵臓をたべたい』正反対の2人、思い伝える福博であい橋

西日本新聞 吉田 昭一郎

フクオカ☆シネマペディア(1)

 福岡市の中心街・天神と九州一の歓楽街・中洲を結び、那珂川をまたぐ歩道橋「福博であい橋」。かつての武士のまち・福岡と商人のまち・博多が出合い、つながるという意味がある。いわば、異質なもの同士の出合いの場なのだ。

 だとすれば、映画「君の膵臓(すいぞう)をたべたい」(2017年、月川翔監督)の中で、性格が正反対の男女が心を通わせる重要な場面の舞台に、なるほどふさわしいのかもしれない。

 重い膵臓の病気で余命長くない主人公の高校生、桜良(浜辺美波)が、「死ぬまでにやりたいこと」の一つ、「男の子とのお泊まり旅行」の旅先に選んだのは福岡だった。相手は、病院で桜良が落とした闘病日記を偶然拾い、クラスでただ1人、彼女の病を知ってしまった縁で交際が始まった級友男子(北村匠海)。

 明るく活発な桜良と対照的に、周囲と距離を置く寡黙な級友の彼。桜良は重病だという彼女の秘密を知った後も態度を変えない彼に次第に引かれていく。恋人でもない、友人でもない。「仲良し君」と呼んでは、桜良は戸惑う彼を強引に引き連れて福岡にやって来たのである。

 2人はラーメンやもつ焼きを一緒に食べる。太宰府天満宮にお参りしておみくじを引く。梅が枝餅を食べたようだ。泊まるのは、ヒルトン福岡シーホークの豪華な部屋。初めてお酒を飲んで…。桜良は「死ぬまでにやりたいこと」を次々と実行する。トランプのゲームで、クラスの誰が一番かわいいか言わせたり、お姫さま抱っこをさせたりして、「仲良し君」は振り回されっぱなしでたじたじだ。

 原作は住野よるの同名小説。桜良の死期を意識しつつ、生きること、人を愛することとはどういうことなのか、関係を深める中で、ともに答えを見いだそうとする2人の微妙な心の揺らぎがまぶしくて、久しぶりに「胸キュン」という言葉を思い出してしまった。

 1泊後に訪ねる福博であい橋。2人はすっかり打ち解けている。彼が「楽しかったよ」といつになく素直な言葉を漏らし、桜良を驚かせる。そして、桜良は「膵臓を食べる」ことの意味とそれに込める思いを伝えるのだ。

 作品の題名の由来が分かる重要な場面である。那珂川の川面が陽光に照らされて輝いている。(吉田昭一郎)

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 毎週月曜更新の新コーナー「フクオカ☆シネマペディア」を始めます。監督や原作者、出演者が福岡県出身だったり、物語の舞台やロケ地が福岡だったり…。徹底的に福岡にこだわった映画紹介です。(正午更新)

 

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