自民総裁選、異例の全国遊説なし 過去20年で初、地方の声届くのか 

 自民党総裁選(8日告示、14日投開票)は、新型コロナウイルス感染症対策名目で全国遊説を実施しないことが決定。党本部によると、少なくとも1999年以降の総裁選では初めてとなる。党員・党友投票も省くことになり、事実上の次期首相を選ぶ機会でありながら、「地方の声」に耳を傾け反映させるのは限定的とならざるを得ない状況だ。 

 「『密』になったら困るわけで、とはいえ人が集まらない街頭演説では何の意味があるんだとなる。(全候補者が)足踏みそろえてやる地方遊説はしない。というか、できない」。4日、野田毅・総裁選挙管理委員長は遊説を見送る正当性をこう強調した。

 これまでの総裁選で自民は、重視する地方での党勢拡大も狙い、全国の主要都市で街頭演説を開催してきた。例えば、第1次安倍政権の退陣を受けた2007年総裁選は、東京都内や大阪、高松両市など数カ所で行っている。

 これに対し、4日に決まった今回の公式日程では、8日に党本部での演説会と共同記者会見、9日と12日に党青年局などが主催する公開討論会をする以外は、候補者がそろって政見を交わす場はない。

 党員投票についても、執行部は党員確認作業などに約2カ月間を要し「緊急事態に政治空白は許されない」(二階俊博幹事長)との理由で取りやめた。「密室でない、より開かれた選挙」を求める若手議員や地方県連の声は届かなかった。

 総裁選は、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長による三つどもえの構図。こうした一連の「土俵づくり」は、既に優勢な菅氏を支持する二階氏らが主導した「石破氏封じ」との見方が一般的だ。石破氏は5日、地方行脚なしのルールについて「国民や党員に訴え、目いっぱい議論すれば自民党は強くなる。工夫のしようはあった」と苦言を呈した。

 党員投票に代わる党員の意思の反映措置として、執行部は両院議員総会で各地方県連に割り当てられる3票の投票先を決める際、予備選などを行うよう勧奨。結局、秋田を除く46都道府県連の大半が実施することとなった。「こんな短期間に予備選ができるなら、党員投票もできたのでは」(石破派幹部)との皮肉も聞かれる。

 3票を「(1人の)総取り方式」とするのか、得票数に応じて割り振る「ドント方式」にするかは県連ごとの判断。菅氏の選挙区がある神奈川県連などが総取りを採用するなど、ここでも3陣営による水面下のせめぎ合いが起きている。総裁選後、党内に禍根を残さないとは限らない。

(郷達也)

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