髪形違反にバリカン、教師にひれ伏し…タイ権威教育に高校生が反旗 

西日本新聞 川合 秀紀

 「髪の長さは校則の4センチを超えていないはず。定規で測ってください」

 タイ東部、5月半ば。高校2年男子ジャローさん(17)=仮名=は朝の全校集会で訴えた。教師は聞き入れず、校則違反として全校生徒の前で後頭部の一部に縦の線が入るように刈った。これで5回目。恥ずかしく、悔しかった。

 同じ体験、思いに苦しむ生徒は他にも男女や地域を問わず広がっていた。5月末、会員制交流サイト(SNS)を通じ高校生グループ「Bad Student(悪い生徒)」が発足すると、ぶざまに髪を刈られた写真や映像が約300件寄せられた。ジャローさんも投稿した一人だ。

 タイでは、中高生の髪形に関して教育省が「パーマは不可」などの原則を、各校が校則で長さなど詳細をそれぞれ定める。これまでも厳しい校則が議論を呼び、2013年に教育省が「長髪も可」と通達。今年5月と7月にも同省が13年決定を確認する通達を出したが、髪を刈る教師が後を絶たず、処分もなかった。

 このため高校生グループは髪形の校則撤廃を求め署名を集め、同省を相手取り提訴にも踏み切った。運動はSNSや報道で話題となり、同省は8月20日、学校が細かい校則を定めるとする通達内容を取り消した。それでもジャローさんは「高校が生徒の人権を抑圧する本質は変わらない」と憤る。

 実際、髪形以外にも愛国心や王室崇拝を醸成する高校のあり方に反発する運動が、さまざまな形に拡大。ここに来て熱を帯びる大学生らの反体制運動とも連動し、異例の王室改革要求の中には「王室賛美の教育禁止」も入った。タイを形づくる権威主義の象徴である高校が「反体制の震源地」(タイ政治の専門家)となっている。 

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