避難所「定員オーバー」相次ぐ コロナ禍、新たな課題

西日本新聞 社会面

危険性周知利用者殺到

 台風10号の暴風域に巻き込まれた九州では、早期避難で想定より被害が軽減された一方、宮崎県椎葉村の土砂災害現場では4人が安否不明のままだ。自治体が6日の日中までに開設した避難所では、新型コロナウイルスの感染防止対策との兼ね合いで「定員オーバー」が相次ぎ、増設に追われるなど新たな課題も浮かび上がった。

 「早めに来て良かった。嵐の中で『使えません』と言われたら泣きついたと思う」。“満員”の福岡県久留米市の避難所に入れた女性(72)は安堵(あんど)した。

 同市は通常の台風で50カ所設ける避難所を64カ所に増やした。通常数百人の避難者は最大5千人を超え、14カ所は満杯に。「コロナ対策で増やしたが増設分の周知徹底が不足していたかも」と担当者は振り返る。

 同県嘉麻市もコロナ対策で定員を4分の1に減らし、17カ所のうち5カ所で定員に達した。うち4カ所は約1時間で満員となり、会員制交流サイト(SNS)も使って他の避難所を案内した。佐賀県白石町も6カ所のうち5カ所で定員を超え、新たに4カ所増設。避難者は想定を大幅に超える1947人となり「報道による台風の危険性の周知が大きかった」と分析した。

 「3密になったらまずいとの意識で、定員の3~4割で受け入れを停止した」と話すのは北九州市。186カ所から203カ所に増やしたが、7カ所で受け入れをやめた。

 222カ所を用意した福岡市は9カ所が収容人数に達し、6日夜に新たに27カ所を開放。直近の台風9号の利用者は34人だったが、今回は最大4472人が避難した。森山浩一地域防災課長は「正直、どれぐらい避難するか予想しにくかった」と打ち明ける。

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 避難所の質によって、人気の差が生じる現実もあらわに。熊本県水俣市の女性(72)は目的の避難所が定員超過となり別の施設に向かい「ここまで早く埋まるとは。もう少し早く行動すれば良かった」。21カ所中9カ所が満杯になり「高台の施設やエアコン完備だと人気が高い」(担当者)。

 長崎市では260カ所(定員2万7千人)の避難所を設け、ピーク時で1万2107人が集まった。余裕はあったものの、特定の場所に希望が殺到して49カ所で満員に。山口典昭危機管理監は「これだけの避難所で満員は初めて」と驚く。 避難者の安全を考え、定員を超えて受け入れた自治体もある。205カ所のうち13カ所が満員になった鹿児島市では、強風の中の移動は危険として定員超えで受け付けた。47カ所中5カ所で定員に達した福岡県大牟田市では、三池地区公民館にその後も避難者が押し寄せ、一部は受け入れた。西田久館長は「雨の中、歩いてきた高齢者らを断ることはできない」と語った。

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 内閣府は6月、避難所のコロナ対策をまとめた。通常時より多くの避難所を設け、ホテルや旅館などの活用の検討も促す。自治体によって準備できる施設数に差があり「悩ましい。課題を整理し対応策を検討する」としている。

 浜松医科大の尾島俊之教授(公衆衛生学)は「感染拡大防止のため人数を制限するのはやむを得ないが、暴風が吹くなど状況次第では積極的に受け入れるべきだ。定員超えになる状況を見越し、間仕切りを多めに用意するなど準備が必要」と指摘。東京大大学院の松尾一郎客員教授(防災行動学)は「強度のある別の住宅や旅館、ホテルを活用した『分散避難』を進めるべきだ。自治体は避難所だけに頼らない避難計画を作った方がいい」と提言する。

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