鳴り響く福岡のビート 加茂川雅仁

西日本新聞 オピニオン面 加茂川 雅仁

 新型コロナウイルス感染による悪影響が最も継続している分野の一つが、エンターテインメントだろう。

 音楽業界では、この20年でCD販売額が半分に落ち込んだが、逆にライブは3倍に増えた。その場でしか味わえない「一期一会」の空間を楽しむ人が増え、業界もチケット収入やグッズ販売で収益を確保してきた。

 福岡市のある音響会社もその波に乗り、社員60人を抱えるまでになった。そのうち10人は今春の新入社員だ。

 「思い切って採用を増やした途端、まさかの…。ひたすら我慢です」

 そう言って、同社の専務(51)は肩を落とした。仕事は前年比で9割減。国の雇用助成金で何とか会社を維持しているが、ライブの現場がないため、新人教育もままならないという。

 ライブでは、主役のミュージシャンを花だとすると、その土壌とも言える所属事務所、レコード会社、プロモーター、音響、照明、ライブハウスなど多くの裏方が動く。全国のライブ売上総額は2019年で3665億円(コンサートプロモーターズ協会調べ)。そのほとんどが失われたのだから、影響は甚大だ。

 福岡の街は1970年代から多くのミュージシャンを育て、送り出してきた。チューリップ、海援隊などのフォーク世代、シーナ&ロケッツやザ・ロッカーズなどの「めんたいロック」、近年もMISIA、椎名林檎など挙げれば切りがない。

 しかし、土壌がやせ細れば花は咲かない。そんな危機感から行動に出たのが、「福岡ミュージックマンス」に携わる人々だった。毎年9月に5会場で開催してきた大規模ライブイベントは中止。それでも「何もせんわけにはいかん」と、総合プロデューサーの深町健二郎さん(58)が声を上げた。

 関係者は協議を重ね、規模縮小で「3密」を避け、映像をネット配信するなど工夫して「毎日、音楽を楽しめる状況」をつくることにした。ピンチをチャンスに、という発想の転換だった。

 その象徴が、福岡ゆかりのミュージシャン、タレントによる「応援ソング」の制作だ。音楽プロデューサーの松隈ケンタさん(40)を中心に、約100人が参加する前代未聞のプロジェクトとなった。

 その曲「Beat goes on」は、こう始まる。

 「僕らの生まれたこの街には 愛と歌声があふれているよ」

 知恵と結束がある限り「福岡のビート」は鳴り響く。(クロスメディア報道部)

 「Beat goes on」のミュージックビデオはこちら

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