「センセー、肩が凝るとよ」どこかおかしい…子の鉛筆の握り方

西日本新聞 くらし面 佐藤 弘

子どもの異変 鉛筆の握り方、大丈夫? (上)

 子どもの心と体の異変が叫ばれて久しい。近年、その変化が加速しているようだ。学校や保育園などから「もう今までの常識が通用しない」と悲鳴にも似た声が聞こえてくる。これから「子どもの異変」と題した記事(随時掲載)を通じ、子どもらと直接触れあう現場の声をベースに考えていきたい。

 まず、鉛筆を握っている子どもの手元を写した3枚の写真を見てほしい。最近多いという握り方の代表例だ。どこかおかしいと思われないだろうか。

   ◆    ◆ 

 長崎県佐世保市の市立広田小では、昨年度、鉛筆の握り方と姿勢を正す目標に取り組んだ。

 「『センセー、肩が凝るとよ』。入学したばかりの児童が、そう私に訴えてきたのがきっかけでした」。1年生の担任をした福田泰三教諭(53)は言う。

 福田教諭は、長崎百合野病院(同県時津町)の理学療法士、村田広志さん(34)に相談した。来校した村田さんは、1年生に「五年生」という漢字をノート1ページ分書いてもらった後で「手や腕が痛い人は?」と尋ねた。

 大半の子が手を挙げる中、改めて鉛筆の握り方をチェックすると、人さし指が「くの字」に曲がっていたり、中指を鉛筆の上に乗せていたり、親指と人さし指が交差していたり…。正しい握り方をしていたのは1割程度だった。

   ◆    ◆ 

 そもそも、なぜ、鉛筆は正しく握らなければならないのか。

 正しく握れば、疲れず、速く、長時間書くことが可能になる。授業にも集中できるし、板書をノートに書き写すのも苦にならなくなって、学力向上にもつながる。「それとは逆に、根気が続かず、漢字練習をやりたがらない子は、鉛筆の握り方が悪い子に多いんです」(福田教諭)

 だから小学校では入学後すぐ、ひらがなを書き始める時期に、正しい鉛筆の握り方を指導する。毎時間、声掛けをしながら、正しい握り方を意識させ、定着させるわけだ。

 「姿勢や筆記具の握り方を正しくし、文字の形に注意しながら、丁寧に書くこと」。低学年の「書写」について、文部科学省の学習指導要領は、そう定めている。

 現実はどうか。入学以前に、我流の悪い握り方が癖になっている子もいる。福田教諭の観察では、周囲の大人も正しい握り方をしている方が少数派。書き順も含め、児童が強く影響されている様子がうかがえた。

 教育現場でより重きを置かれるのは、例えば国語なら、児童の鉛筆の握り方がどうかより、文字を覚えているか否かの方だ。ベテラン教諭は「鉛筆を持つ姿勢とか、テストに反映されないものの指導は、どうしても後回し」と言う。

   ◆    ◆ 

 指を曲げる筋肉は首や胸回りと、指を伸ばす筋肉は背筋とも連動する。「肩凝りの要因には、変な握り方や崩れた姿勢による筋肉の異様な緊張もある」。村田さんの指摘を受けた福田教諭が、あらためて児童の様子を観察すると、鉛筆を正しく握れない子どもには、きちんと着座していないという明白な特徴があった。

 教員や保育士、研究者などで組織する「子どものからだと心・連絡会議」(議長=野井真吾日本体育大教授)がまとめた2019年版白書によると、養護教諭が最近増えたと実感する、子どもの体に関する変調のうち、「首・肩の凝り」は中学生で68%に上る。

 鉛筆の握り方や姿勢が原因だと断定はできないが、中学生になって突然そうなったわけではなく、鉛筆の握り方に表れるような、生活習慣の積み重ねの結果と考えるべきではないか。

 幼い頃についた癖はなかなか直らない。だが、指導する側に「鉛筆の握り方は一生もの」という問題意識がなければ、目の前で進行している事象の怖さは見えない。

 「教師もまた、最初にひらがなを教える時は、鉛筆の握り方や姿勢について声掛けするが、それ以降は、ほかに教えるべきことに意識が向き、目配りが減る傾向にある」。長年の経験から、そう考えた福田教諭。学校ぐるみでこの問題に取り組もうと、仲間たちに提案をした-。

 (佐藤弘)

PR

くらし アクセスランキング

PR

注目のテーマ