コロナ・ショックの後に日本経済を揺るがす金融危機がやって来るのか?

西日本新聞

 2008年のリーマン・ショックは、アメリカの投資銀行が経営破綻したことをきっかけに、世界規模の金融危機へと広がって行った。日本にも株価の急落や景気後退といった大きな影響があったのは、まだ記憶に新しいところだ。そしていま、誰も予想さえしていなかった事態が進行中である。新型コロナウイルスによる感染症の世界的広がり、パンデミックだ。感染を抑えるために、人と人との間に距離を取ることが求められ外出など私たちの行動が制約され、これが世界経済に大きな影響を与えている。

 リーマン・ショックが金融システムの崩壊から始まって実体経済にまで影響を与えたとするなら、今回のコロナ・ショックは人々の行動の変化が実体経済に大きな変動を生じさせ、それが金融システムにまで影響をおよぼすという、リーマン・ショックとは逆の連関が生じている。そして、かねてから本書の筆者が主張しているように、リーマン・ショック後の金融緩和というバブル経済的状況がすでにある上に、今回のコロナ・ショックは訪れた。低金利政策の中で高利の金融商品に手を出さざるを得ない企業や金融機関は、いまバブル崩壊とコロナ危機という2つの危機に直面している。

 コロナ危機で株価が暴落した今年3月、ソフトバンクグループ総帥の孫正義氏が金融機関からの個人的借入のために担保としていたソフトバンク株も急落。そのためどれだけの株を新たに担保として積み増したか、金融機関名と株数まで具体的に書かれており、こうした世界の過酷さを垣間見る思いがする。同時に、世界有数の資産家である孫氏でも窮地に陥る可能性があることが、ヒシヒシと伝わってくる。

 低金利下でのバブル崩壊危機とコロナ禍で四苦八苦している企業は、当然のことながらソフトバンクグループだけではない。メガバンクや保険会社、総合商社、航空会社ほか、実名入り、かつ詳細なデータ付きでその経営状況等が分析され、リーマン・ショックを上回る金融危機到来の可能性について論じられている。ただし、本書は単に危機を煽る書ではない。日本経済の病巣を明確に示し、経済再生への秘策についても論じられる。日本経済の行く末に多少なりとも不安を持つ読者に、少なからぬ示唆を与えてくれるに違いない。

 

出版社:講談社
書名:ソフトバンク「巨額赤字の結末」とメガバンク危機
著者名:黒川 敦彦
定価(税込):924円
税別価格:840円
リンク先:https://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000344738

西日本新聞 読書案内編集部

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