日本の男社会を破壊する痛快悪女エンターテインメント

西日本新聞

 今年は戦後75周年。焼け野原だった敗戦国が、よくここまでの復興と発展を実現できたと思う。それだけ先人たちの功績は計り知れない。しかし、景気後退が常態化した今となっては、むしろ弊害となる「昭和の遺物」も目立ってきた。中でも男性優位の社会構造はその代表的なものかもしれない。

 男女平等の度合いを示す「ジェンダー・ギャップ指数」(世界経済フォーラム、2019年)は、日本は153カ国中121位だった。女性の議員や役員は依然少ないまま。ドイツ、ニュージーランド、台湾など女性がトップに就任する国が増える一方で、日本ではその気配すらない。政府は女性の活躍を増やす政策を掲げているが、遅々として進んでいない状況だ。

 この長引く閉塞感を打破してくれる人材が登場してほしい。そんな世間の声をキャッチしたかのような小説が本書だ。主人公は「美しすぎる奇跡の46歳」として注目の女性議員、福永乙子(ふくながおとこ)。3回目の当選で初入閣を果たし、その就任会見で「わたしは男たちの論理で作られたこの日本をひっくり返します」と男社会へ宣戦布告した。ニューヒロインの登場に国民は騒然。メディアに連日登場し、人気は急上昇に。

 そんな乙子の活躍を憎たらしく思う男性議員たち。とくに次期総理を狙う官房長官は、強烈な敵意を向ける。乙子が失脚するような後ろ暗い過去はないものか。永田町に跋扈する政敵たちが彼女の過去を探り始めると、出てくる出てくるドス黒い過去が。あるときは高級コールガール、あるときは新興宗教の教祖、あるときは反社会勢力トップの盟友。一体、福永乙子とは何者なのか。ページをめくる手が止まらなくなる。

 そもそも乙子は、出生からすでに普通ではなかった。そして、成長する過程においても、筆舌に尽くしがたい傷を負っていた。男たちに翻弄された壮絶な過去が、乙子をスーパー悪女に育てていったのだ。政敵たちが後ろ暗い過去をネタに脅しをかけようとしても、さらに狡猾なやり方で跳ね返してしまう乙子。女の武器を使って男の懐に入り、平気で亡き者にしてしまうほどの悪女だが、爽快感すら覚えてしまうのはなぜだろう。

 そして彼女は前進を続ける。大臣など、乙子にとっては単なる通過点に過ぎない。目指すはこの国の頂であり、自分を痛めつけてきた男社会への復讐だ。ぜひ「恐ろしくきれいな爆弾」の破壊力に酔いしれてほしい。

 

出版社:小学館
書名:恐ろしくきれいな爆弾
著者名:越智月子
定価(税込):1,700円
税別価格:1,870円
リンク先:https://www.shogakukan.co.jp/books/09386587

西日本新聞 読書案内編集部

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