史上最長政権に「誇り」「不満」 安倍首相地元の山口・長門を歩く

西日本新聞 社会面 岩谷 瞬

 憲政史上最長の7年8カ月の在職期間を誇る安倍晋三首相が間もなく退陣する。不況に苦しんだ日本経済を好転に導き、米ロ両国の首脳と密接な関係を築き、存在感を示した一方で、数々の疑惑も浮上した。首相の祖父から3代にわたって安倍家を支え、首相夫妻が盆暮れには父晋太郎氏らの墓参りに帰省する山口県長門市油谷(ゆや)の人たちは、どんな思いを抱いているのか。棚田が美しい小さな集落を歩いた。

 油谷は長門市西部にあり、首相の祖父で衆院議員だった寛氏が生まれ、晋太郎氏が幼少期を過ごした場所だ。集落そばの高台には両氏が眠る墓があり、首相が年末年始やお盆に墓参りに訪れると、数十人の住民が出迎える。

 晋太郎氏の時代から家族総出で選挙活動を支援してきた70代の女性は「あと一歩で総理になれなかった晋太郎さんの宿願を果たし、立派に務め上げた。誇らしい」と感慨深そうに話す。病気を理由にした突然の辞任については「無念だったろう」といたわった。

 2016年12月、首相は長門市の湯本温泉にロシアのプーチン大統領を招いて首脳会談を開催した。ある女性(73)は「外交で米国、ロシアからこれほど一目置かれた首相は他にいない」と胸を張る。

 女性は森友・加計学園問題が国会で紛糾していたころ、墓参りに訪れた昭恵夫人に「頑張ってくださいね」と声を掛けると、昭恵夫人は大粒の涙を流したという。「昭恵さんは地元のボランティア活動にも顔を出し、『私で役に立つなら名前でも写真でも使って』と話していた。素顔が伝わっていない」と憤る。

 地元住民の多くは安倍家を応援してきた自負を口にする。ただ首相主催の「桜を見る会」の問題に対してだけは、不満や違和感を訴える支持者もいる。

 後援会の高齢男性は1度、首相の地元事務所に誘われて参加した。都内のホテルで開かれた前夜祭で出された料理は団子に巻きずし程度の軽食だったと記憶している。5千円の会費を支払い、領収書も受け取った。「観光ツアーのようなもの」と気軽に思っていた。

 しかし昨年、国会で問題視されると、事務所スタッフからは「出席の有無を含め他言しないように」と“かん口令”を敷かれた。その後、事務所からの説明はないという。「誘っておいて『余計なことはしゃべるな』とは。何の説明もしない態度も、いかがなものか」と不満顔だ。

 別の後援会関係者は言う。「桜を見る会は地元が深く関わっているのに、強引に幕引きを図った。これからも安倍さんを支えるつもりだが、しこりが残る支援者は少なくない」

(岩谷瞬)

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