安倍さん、子どもの声聞こえますか? 「経済上向けば幸せ」は幻想

西日本新聞 社会面 本田 彩子 宮下 雅太郎

【最長政権 私の採点】子どもNPOセンター福岡代表理事・重永侑紀さん

 学年を締めくくる子どもたちの最後の1カ月は、突然失われた。2月27日、安倍晋三首相は新型コロナウイルスの感染拡大防止を掲げ、全国の小中高校などに一斉休校を要請した。

 「卒業式など行事の一つ一つが、子どもにとって大切なもの。要請は、子どもは無視できる存在と思われていることの表れだ」。子どもに関わるNPOをつなぐ「子どもNPOセンター福岡」の重永侑紀代表理事(56)はこう考える。

 一斉休校は、科学的根拠に乏しい政治的判断だったとの見方も強い。「子どものためと言いながら、肝心の子どもの声は聞かない。結果として、大人の価値観が押し付けられている」

 虐待、貧困、いじめ、不登校-。子どもを巡るさまざまな問題は「悪化している」と重永さんは感じている。「政権は、経済が上向けば子どもも幸せになれるという考えで政策を進めてきた。でも数字を見れば、それは幻想にすぎないのではないか」

 全国の児童相談所が対応する児童虐待件数は増え続け、2018年度は約16万件に上った。子どもの貧困率は13・5%で、先進7カ国の中では高い水準のまま。小中高校のいじめ認知件数は、積極的に認知を求める被害者側の声が高まったことで54万件を超えた。小中学生の不登校は過去最多の16万人以上となった。

 「子どもが本当に必要としていることと、政策との間にギャップがある」と感じている。

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 7年8カ月の長期政権下、大きな転換点もあった。

 16年、児童福祉法が改正され、保護の対象でしかなかった子どもが初めて「権利の主体」として位置付けられた。「1994年に日本が批准した『国連子どもの権利条約』にのっとった法改正がようやく実現した。政策が動きだす大きな好機だった」

 2019年、東京都目黒区で両親からしつけと称した体罰を受けた5歳女児が亡くなった虐待事件(18年3月)などを契機に、児童虐待防止法と児童福祉法が改正。親などによる体罰の禁止が明文化された。社会的養護が必要な子どもの措置に、本人の意思を反映する仕組みづくりも始まった。

 子どもの権利を保障する具体的な取り組みは緒に就いたばかりととらえ、現実に目を向ける。

 小中高校などに出向き、年間約1万人の子どもたちと接する中で「親でも子どもをたたいたら駄目」と話すと、ほとんどの子どもが驚くという。「意見を何でも聞かせて」と語り掛けても、大人の顔色をうかがう子も多い。

 「大人は今も権利の主体者である子どもに、権利があることさえ伝えていないのでは」。それは、決して政権だけの責任ではないと考える。極端な虐待事件は社会から注目されるが、日常にある子どものさまざまな問題は見過ごされがちだ。

 「大人がもっと現実の子どもを見て、声を聞く。それができれば、子どものための本当の議論や政策が進む。もっと本気にならないといけない」

(本田彩子、写真・宮下雅太郎)

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