官民で医ケア児の支援 珍しい手法の狙いと手応え、キーマンに聞く

西日本新聞 くらし面 三宅 大介

北九州の挑戦<青木穂高・市地域医療課長に聞く

 本欄では2回にわたり、医療的ケア(医ケア)が必要な子どもや家族の支援に官民で乗り出した「北九州地域医療的ケア児支援協議会」の取り組みを紹介した。協議会の「裏方」として事務局を務めるキーマンの一人、北九州市地域医療課長の青木穂高さん(36)に狙いや手応え、課題を聞いた。支え手としてまず100人規模のマンパワーを確保し、当事者一人一人の暮らしぶりを丁寧に把握して個別に対応を考えていく手法は政令市では珍しい。 

当事者意識を共有

 -医ケア児支援は2016年の児童福祉法改正で自治体の努力義務となった。市が官民組織を立ち上げたのもそれがきっかけ?

 「自治体としてはその通り。ただ以前から、こうした家族を支えるため小児在宅医療を進めなければいけない、と強い思いを抱えた小児科医の方々がいた。土壌があったのが大きい」

 -最初に医療、福祉の関係者を100人集めて「ネットワーク連絡会」を発足させ、それぞれが事業の枠を超えた形で支援しようと意思統一した。狙いは?

 「本気で支援するには支え手の裾野を広げないと実行できない。徐々に仲間を増やすより、初めから参画してもらい、支援のストーリーを共有すれば当事者意識も強まり、その後の取り組みも円滑に進みやすい」

 「協議会のメンバーになってもらった基幹病院の小児科医や訪問看護師の方々も、情報が集まり、人とのつながりもできる『土台』をまずつくりたいとの思いがあり、一致した。高齢者の場合、地域の医療や介護などの多職種が連携して支える『地域包括ケアシステム』を国が推進して久しい。将来的には医ケア児版の地域包括ケアの仕組みができればと考えている」

本当のニーズ探る

 -病院などの協力で住所を一人一人抽出し、調査票を配るだけでなく連絡会のメンバーが記入も手伝い、必要な医ケアや要望を把握してリストを作った。個人情報保護の流れにある中では、かなり異例だ。

 「匿名性が高く、傾向を大づかみするだけの調査では、例えばある福祉サービスの利用度が低い場合、そもそもニーズがないのか、実は使い勝手が悪いのか、結果的にサービスが不足しているのかどうかが分かりにくい。適切な施策を打つためにも個別具体的に見ていく必要があった」

 「確かに行政が関わり、個人情報を持つことには大きな責任が伴う。医ケア児一人一人の人生や、家族の暮らし全部を支援できるわけではないけれども、できる限りのことはやろう、支援者の方々の本気度に少しでも近づこうと、市や協議会としても覚悟を決めた」

 -協議会が具体的に乗り出したのが災害支援。障害者など避難時に支援が必要な人について、国は地域の自治会などに個別の避難計画づくりを委ねているが、進んでいない。

 「地域の方々にしてみれば、支援を任されても方法が分からない。連絡会の協力のおかげで100人を超す市内の医ケア児家族のリストができ、うち呼吸器などを使い、浸水想定区域などに住む家族の避難計画づくりに着手した。最終的に地域の自治会などの協力も得られる形になれば理想だが、まずは自分たちの手で、協議会が率先してやろうとしている」

つなぎ役の輪広げ

 -医ケア児家族の暮らしの課題はほかにも一時預かりや通園、通学などの支援など多岐にわたる。活動の手応えや今後の見通しは。

 「協議会、連絡会の取り組みがスタートしたおかげで、訪問看護を長時間利用できる補助事業の予算が確保でき、近く具体化する。メンバーを通じて必要に応じてスムーズに家族側と連絡を取り、コロナ禍で必要な備品の確保を支援したり、台風での事前準備を呼び掛けたりして、市の対応を周知することができた」

 「ただ災害時の個別の避難計画づくりもまだまだこれから。うまくいくのか、できるのかできないのか、さまざまな課題について小石を積み上げるように試行錯誤するしかない。そうした緊張感と謙虚さこそが、取り組みの継続につながると思う」

 -高齢者も障害者も含めて、地域で安心して暮らしていける支え合いのシステムはいずれ実現する?

 「老人会や民生委員の方々など高齢者を支えるネットワーク活動をされている方々は各地にいる。協議会活動を地道に続けていけば、既存の支援者といずれ出会い、つながっていけると確信している」

 「支え合いは法律や制度では実現できない。行政も含めて『つなぎ役』と『つながる場』を少しずつ増やしていくことが、遠回りでも確実な方法だと考えている」 (聞き手は編集委員・三宅大介)

 青木穂高(あおき・ほたか)1984年、埼玉県生まれ。2008年、厚生労働省入省。障害福祉、労働、国民健康保険、情報政策の担当を経て17年4月、北九州市に出向、地域医療課長に就任。

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