外交・安保…論戦すれ違い 安全運転の菅氏、独自色の石破氏と岸田氏

西日本新聞 総合面 古川 幸太郎

 自民党総裁選で外交・安全保障を巡る論戦が盛り上がらない。外交経験が豊富な岸田文雄政調会長と安全保障政策の論客として知られる石破茂元幹事長はそれぞれ独自色をアピールするが、菅義偉官房長官はどちらかといえば不得意分野。肝心の「大本命」が安倍晋三首相のスローガン「戦後外交の総決算」の継承を訴える「安全運転」にとどまっているためで、議論が深まらない。

 「外交・安全保障が弱点だと指摘する声があるが、これまでさまざまな外交現場を見てきた」。菅氏は寄稿した10日発売の月刊誌でこう強調。官房長官として安倍首相とトランプ米大統領の「シンゾー・ドナルド」の関係を“仲介”した舞台裏も明かした。

 事務所にはトランプ氏と並んだ写真を飾る。昨年5月に訪米を果たし、米政府高官との仲を「じっこんだ」と周囲に語ったことも。首脳外交にも意欲を示し、外交・安保の苦手イメージ払拭(ふっしょく)に努めている。

 だが討論会での存在感は薄い。外交・安保の話題になると用意した紙に目を落とし、慎重な言い回しが目立つ。「菅カラー」と呼べる新機軸はなく、周辺は「失言さえしなければいい」と語るが、早速、自衛隊の憲法解釈を巡る発言が修正に追い込まれ、首相就任後の国会答弁を不安視する声も上がる。

 一方、外相を4年7カ月務めた岸田氏はオバマ米大統領(当時)の広島訪問などの実績をアピールする。広島が地元だけに核軍縮にも意欲を示す。共同記者会見では「世界の分断、自国第一主義が進む中、多国間外交が大事になる」と述べ、国際協調を重視する外交姿勢を明確にした。

 防衛相を務めた石破氏は北朝鮮による日本人拉致問題の解決に向け、日朝両国が東京と平壌に相互に連絡所を設けるのが持論だ。ロシアとの領土交渉は「4島返還を譲るべきではない」として「2島先行返還」にかじを切った現政権との違いを強調。非核三原則は「持ち込ませず」の見直しも視野に議論を始めることを提起する。

 もっとも、外交当局は既に「菅政権」を見据えている。官邸筋は「これまでは外交に興味がなかった。外相に任せるだろう」とみる。外務省幹部は「何も心配していない。むしろ頼りになる存在」。首相になればコロナ禍で緊迫する国際情勢への対応力が試されるが、独自色よりも安全運転を期待する。

(古川幸太郎)

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