炭鉱で働く女性、鉄で再現 宮若市の工芸家・石橋さん制作

西日本新聞 筑豊版 安部 裕視

 福岡県宮若市で「鉄の美術館」を主宰する鉄工芸家の石橋鉄心さん(75)が、石炭をボタとえり分けて水洗いする「洗炭場(石炭水洗い場)」を鉄で再現した。昭和30年代半ば、自身が中学の夏休みに洗炭場でアルバイトをした記憶を元に、約1カ月かけて制作。石橋さんは「筑豊炭鉱史の一端を知ってほしい」と話している。

 今夏、直方市の多賀町公園や雲心寺に立つ炭鉱王、貝島太助の銅像が修復されたのをきっかけに、石橋さんは「石炭産業を鉄で表現しようと思い立った」。太助が創業した「貝島炭砿」が宮若市で操業し、鉄の美術館の敷地一帯がかつて同社所有だったという縁も、動機づけになったという。

 かつての洗炭場は「暑さの中、女性たちが軍手をはめ、汗びっしょりで働いていた」。販売業者が炭鉱から仕入れた石炭を扱い、同様の現場が直方市から北九州市八幡西区にかけての沼地に密集していたという。

 作品は「洗炭場で働く女性たち」と名付けた。高さ25センチの女性の人形5体には、ともに活動する筑前一閑張り作家の有吉ゆかりさん(72)が、炭坑絵師・山本作兵衛の作品からイメージしたかすりの作業着を着せた。黒く塗ったバラス(砕石)を石炭に見立て、くぎやボルトでボタや草などを表現。馬車と車輪が三つのトラックには「運搬手段の変化を表した」という。

 石橋さんは直方市植木の出身。犬鳴川の河原で堆積した微粉炭(石炭の粉)を集めて丸め、天日干しにして煮炊きなどに利用するなど石炭は身近な存在だった。洗炭場でのアルバイトは水くみやお茶を配るなどの雑用だったが、「『黒ダイヤ』と呼ばれた石炭と人の暮らしの関係を、よりよく知る機会になった」と話す。

 関連作品も制作中で、田川発祥の「炭坑節」の踊りを、植木に伝わる「植木三申踊(みさるおどり)」(県指定無形民俗文化財)からイメージして表した人形を作るという。「炭鉱労働者の姿をどう形にできるか、鉄工芸家として挑戦を続けたい」と石橋さん。洗炭場とともに、10月半ばから館内の「昭和レトロ館」で展示する。

(安部裕視)

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