アベノミクス、運にも恵まれた? 三本の矢で景気回復演出も…

西日本新聞 社会面 吉田 修平

【最長政権 私の採点】久留米大教授・塚崎公義さん

 「20年続いたデフレに『三本の矢』で挑み、400万人を超える雇用をつくり出すことができた」。8月28日、安倍晋三首相は辞任を表明した記者会見で、こう強調した。

 2012年12月の第2次安倍政権発足から、首相が進めた経済政策「アベノミクス」。柱となる「三本の矢」とは、金融緩和、財政政策、成長戦略を指す。

 久留米大商学部の塚崎公義教授(63)=日本経済論=は「安倍政権の8年弱で経済は結果的に良くなった。大学の評定風に言えば『良』だろう」と一定の評価を下す。「(世界的な景気回復の時期と重なったという)運にも恵まれたのも大きいが、そこそこ良い成果を残した」

 日銀が13年春に始めた国債などの大量購入で市場にお金を行き渡らせる「異次元金融緩和」は円安をもたらした。価格競争力が強まった輸出関連を中心に企業業績は改善。日経平均株価は15年ぶりに2万円を超え、バブル崩壊後の最高値に達した。政権発足直後から大規模な財政出動を相次いで打ち出し、景気回復を演出した。

 有効求人倍率は初めて全都道府県で1倍を超え、約45年ぶりの高水準となった。塚崎さんが教壇に立つ久留米大でも「この数年、地元中小企業からの求人が明らかに増えた」という。

 だが、3本目の矢に掲げた成長戦略では「地方創生」や「1億総活躍」など次々と目玉政策を打ち出したものの、いずれも尻すぼみ。この点は塚崎さんも「評価できるめぼしいものはなく、(矢ではなく)まさに『千本の針』だった」と手厳しい。

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 安倍政権が「戦後最長」とアピールしてきた景気回復期間は、実際には政権発足直後の12年12月から18年10月までの5年11カ月で終わり、最長には2カ月届かなかった。実質賃金は上がらず、多くの人には景気回復の実感は届かなかったとの声も根強い。

 好景気によってもたらされた安定した政権基盤を生かし、抜本的な構造改革を進める選択肢もあったが、「痛みを伴うような改革はしなかった」と塚崎さんは指摘する。首相は「(岩盤)規制を打ち破るドリルの刃になる」と意気込んだが、雇用法制や社会保障などの改革は総じて踏み込み不足だった。

 足元では新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今年4~6月期の実質国内総生産(GDP、季節調整値)が、年率換算で前期比28・1%減と戦後最大の落ち込みに。有効求人倍率は7月まで7カ月連続下落。新型コロナによる雇い止めは約5万2千人と日を追って増える。

 アベノミクスの成果は急速にしぼむ一方、マイナス金利政策による金融機関の業績圧迫や、度重なる財政出動による国の借金の増加など、副作用は膨らむ。

 後継首相には何が求められるのか。塚崎さんは「少なくとも全国民に一律10万円を給付するといったばらまき政策ではない」と断言。「本当に困っている企業や人々にお金を回し、倒産や失業者を増やさないことが肝要だ」

(吉田修平)

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