アスベスト調査員をVRで育成 福岡県、研修乏しいハンデ克服

西日本新聞 社会面 華山 哲幸

解体ピーク見据え、人材不足に対応

 福岡県は仮想現実(VR)技術を活用して、建物の解体時にアスベスト(石綿)の有無を調べる専門家の育成に乗り出す。石綿を使った建物の解体は2020年代後半にピークを迎える見通しだが、地方では実地研修の機会がなく調査を担う人材が不足。コロナ禍を受けた「新しい日常」で接触機会の減少が求められていることもあり、VRの特性を生かして公的資格の取得者を増やしたい考えだ。

 石綿調査を現場で学ぶ機会は現状、東京と大阪で実施される資格取得時の実地研修に限られており、地方での技能向上が課題となっている。

 県が導入するVRは、高解像度カメラで石綿が使われた建物内部を360度撮影して制作。壁の表面に加え、天井裏や床下にも石綿がないか調べる手法が体験できる。約10分の映像を複数パターン作り、講習会などで活用する方針だ。県は10日開会した県議会定例会に、関連事業費約5千万円を盛り込んだ20年度一般会計補正予算案を提案した。

 石綿は耐熱や絶縁の特性があり、高度成長期に建材として広く使われたが、吸い込むと悪性中皮腫や肺がんを発症するリスクがあり、国は06年に製造や使用を禁止した。

 国の推計では、石綿を使った可能性がある建物は国内に280万棟あるとみられ、28年には年間約10万棟の解体が必要と見込まれる。22年4月からは解体前調査の都道府県への報告が義務化され、23年には資格所有者などによる調査が義務付けられる予定だ。

 国土交通省などは13年に「建築物石綿含有建材調査者」の資格を創設。30万~40万人の取得を目指すが、今年3月時点では全国で約1700人、福岡県で53人にとどまっている。

 県環境保全課は「現場でしか得られない感覚をVRで実現し、人材育成につなげたい」としている。

(華山哲幸)

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