「助けて」言えない…コロナで大打撃の性産業 支援者が見た現状

西日本新聞 くらし面 川口 史帆

福岡市の行政書士佐藤さん、業界健全化で偏見解消を

 コロナ禍で感染拡大の要因の一つとされ大打撃を受けた「夜の街」。中でも性風俗業は一部の公的支援の対象から除外され、苦境にあえぐ。性風俗店やそこで働く女性を支援する行政書士の佐藤真さん(36)=福岡市東区=は「苦しくても表だって助けを求められない事情を抱え、生存権を脅かされている人がいる。社会は無視しないでほしい」と訴える。

 「キャバ嬢や風俗嬢にも等しく補償を」。4月、佐藤さんは福岡市・天神の路上でマイクを握って訴えていた。片方の手には「#自粛と補償はセット」と書かれたプラカード。

 遠くでうかがうように見ていた女性が駆け寄ってきた。「夜の仕事をくびになり、役所で生活保護は受けられないと言われた。どうすれば…」。必死さが伝わる。話を聞くと、窓口の職員は根拠のない理由を並べて「基準に満たない」と女性を追い返したという。よく聞く話だ。無料相談ができる、と名刺を渡した。

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 佐藤さんの事務所には3月ごろから性風俗業関連の相談が急増。半年で昨年の4倍の約40件、生活保護申請の同行は20件に迫る。

 政府はコロナ禍に苦しむ事業者を支援する持続化給付金や家賃支援給付金の対象から性風俗業を除外した。一方で働き手の女性の多くは店と業務委託を結んで働く「個人事業主」として給付を受けられる。ただ税務の知識や助言を得る機会に乏しく、確定申告をしていない人も多い。その場合は給付申請ができない。

 佐藤さんは3月末、性風俗業などの権利擁護を訴える「ナイト産業を守ろうの会」を設立。他業種と同じ支援を求めて署名活動をし、国や福岡市議会に請願した。

 佐藤さん自身、かつて10年以上「夜の街」にいた。「性風俗業者イコール反社会勢力、働く女性は借金苦やホスト依存で、大金を荒稼ぎ。そんなイメージが根強いが、実際は違う」

 佐藤さんによると、性風俗業者は通常、銀行から融資を受けられず、口座開設すら断られる。働き手の背景はさまざまで子どもを養うためという人も多い。収入は個人差が大きく客が減ればたちまち困窮する人も少なくない。社会的知識や技能に乏しい人も目立つ。

 一番の問題は相談相手がいないこと。家族や友人らに隠して働く人がほとんどで、トラブルに遭ったりお金に困ったりすると店のスタッフに頼りがちだ。福岡市・中洲の店舗型ヘルス店長(50代男性)は「女の子から『家賃を払えない』『明日食べるお金もない』と相談を受ける。ポケットマネーを渡すこともある」と話す。

 だが店への依存が深まれば辞めづらくなる。そこにつけ込んで売春を示唆したり、働かせ続けたりする悪質な店もあるという。

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 佐藤さんは業界の健全化にも力を尽くす。関わる店には適法営業のための助言をし、働き手には会員制交流サイト(SNS)で「本番行為(売春)を示唆する店で働かないで」「辞められない時は相談を」と呼びかける。相談を受けて店に働きかけることもある。

 暴力団排除条例が奏功し、業界には法令を順守する「普通の事業者」が増えた。だが「まっとうな職業」とは見なされない。「自己責任だと批判しても立場の弱い人を追い詰めるだけだ」。コロナ禍での国や自治体の対応は差別と貧困の悪循環を助長しているとも感じる。「業界への偏見解消にもつなげたい」と話す。 (川口史帆)

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