『狂い咲きサンダーロード』響くロック、バイクの爆走 根っこに山笠

西日本新聞 吉田 昭一郎

フクオカ☆シネマペディア(2)

 主人公のジン(山田辰夫)は暴走とけんかがすなわち生きること、みたいな不良。やせて小さいのに突っ張りまくって、痛々しくて、目をそらしたくなるほどだ。

 「狂い咲きサンダーロード」(1980年、石井岳龍=当時・聰亙=監督)。幻の街・サンダーロードでは、暴走族の各派が道路交通法改正を機に「愛される暴走族」を目指して順法走行と各派融和でまとまろうとする。だが、ジンたちは暴走をやめず、圧倒的に多数の順法派に突っかかって敵対する。なぜ、そこまでやるのかよく分からない。ジンの中には衝動的で本能的な何かがある。

 福岡市出身の石井監督は子どもの頃からあふれる表現衝動があった。誰もが持つ攻撃的な生存本能のようなものだ。博多祇園山笠を舁(か)いてそれらをぶつけては発散して育った。上京してからはロック音楽と映画でそれを満たした。

 「狂い咲きサンダーロード」は日大芸術学部の卒業制作として22歳の時に撮った作品だ。異例の全国公開となり、今も熱狂的なファンがいる伝説の映画。

 あれから40年。石井監督は作品への思いを今も熱く語る。「同調圧力が働く日本社会にあっては人は悪いエネルギーやストレス、不満、怒りをため込む。それは孤立すればするほど破壊衝動につながっていく。認めずに無視したり、悪と決めつけてしまったりしては逆に危うい。破壊衝動の暴発を抑える何か救いが必要ではないか。私には映画があった」

 石井監督は、ジンを「同調できないのに同調を強要してくる者たちへの怒り」から「孤立していく人間」として描き出した。個の圧殺へのあらがいである。順法派にけんかを仕掛けてはぼろぼろに痛めつけられ、命の危険にさらされる。教育するという先輩の政治結社に一時預かられるが、統制には収まらない。飛び出してはまた戦おうとする。

 泉谷しげるやパンタ&ハル、THE MODSのロックががんがん鳴り響く。一見ひ弱なのに、すごみのあるたんかを繰り返すジンに、心がざわついてくる。危ないぞ、大丈夫か。バトルスーツを着て大勢を相手に1人で命懸けの戦いに挑む頃には、ジンはもう輝いている。 

 ジンがバイクをふかす音の残響。最初は「うるさいな」と、うっすら嫌悪感もあったが、体を震わせながらハンドルを握り締め、まっすぐ前を向いて突っ走る残像に「あんた、逃げるなよ」という声なき声がスクリーンの奥から聞こえてきた。その爆走は、石井監督の心の根っこでは、ひたすら前を向いて走る博多祇園山笠の舁き手の躍動と重なっている気がする。

 傷だらけのジンがさまよう街は、撮影当時の福岡市。地下鉄工事中の大博通りや天神地下街が出てきて、福岡の映画館では公開当時、おお、と声が上がったそうだ。(吉田昭一郎)

※この企画は毎週月曜の正午に更新しています

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