「日田杉守る、魂込めて」豪雨被害 大分県日田市の林業者

西日本新聞 社会面 中山 雄介

7月記録的豪雨で倒木、林道寸断

 全国有数のスギ産地の大分県日田市で、先祖代々、森と生きてきた一人の林業者が、苦難に立ち向かっている。7月の記録的豪雨は大量のスギを押し倒しただけでなく、林道もずたずたに寸断。2カ月たっても復旧は進まず収入ゼロが続く。それでも数百年続く家業をたたむつもりはない。「家族のように愛する森。意地でも立て直す」。山深いスギ林に足を踏み入れ、今日も大木と格闘する。

 日田市中津江村の林業会社「田島山業」社長の田島信太郎さん(63)。9月初旬、所有する山林で根元から倒れた樹齢約60年のスギをさすりながら「これだけ傷が付いたら売り物にならない」とため息をついた。

 同社管理の山林は約1200ヘクタール(東京ドーム約255個分)で、張り巡らされた林道の被害は100カ所以上と見込む。心配した台風10号の影響は少なかったものの、木材を運び出せない苦境は続いたまま。幹線の国道442号は10月下旬にようやく開通の見通しだが、山中に延びる林道の復旧は見通しが立たない。

 日田地区原木市場協同組合によると、豪雨の影響を受けた市内7市場の7月の取扱量は2万2779立方メートルで前年同月比の半分以下だ。「林道復旧が遅くなると、撤退する業者が出かねない」(組合関係者)状況にある。

 林業者は近年、大きな風水害や、木造住宅減による木材需要減少といった困難に直面してきた。田島さんは時代に合わせ、地元の林業者とともに「日田杉」のブランド化を図るなど知恵を絞り、森を守ってきた。「どの範囲まで追加投資して森を管理していくか、正直、迷う」。これまでに経験したことのない被害に向き合う今、そう吐露する。

 鎌倉期からこの地に根を下ろしてきたという田島家。祖父の常次さんは「日田の気候に合う」と地元のスギ固有種ヤブクグリを好んで植えた。根元は曲がりやすいが柔軟性があって折れにくく、豪雨で根元ごと流されても折れなかった。山中に倒れたヤブクグリを前に、田島さんは力を込めた。「一心同体ともいえる森に立つと、先代たちの魂を感じる。私も折れない。愛情を込めてスギを植えれば、50年後には誰かが切り、人の役に立つと信じている」 (中山雄介)

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