ドコモ口座不正 預金者の不安を取り除け

西日本新聞 オピニオン面

 政府が旗を振り事業者が推進するキャッシュレス決済に落とし穴が見つかった。被害の全容解明を急ぎ、再発防止策を徹底しなければならない。

 NTTドコモが手掛ける電子マネー決済サービス「ドコモ口座」で、成り済ましによる銀行口座からの不正送金が明らかになった。知らないうちにドコモ口座が作られて、本人名義の銀行口座とひも付けされ、勝手に送金されていたという。

 同社によれば、判明した被害は12銀行の顧客で計73件、約1990万円に達する。被害はさらに増える可能性がある。

 怖いのは、ひも付け可能な銀行35行に口座を持っていれば、誰もが被害に遭う恐れがあるということだ。身に覚えのない送金がないか確認しても、それだけでは不正送金を止めることはできない。

 被害の拡大を防ぐには、銀行は自行口座からドコモ口座への送金をストップし、ドコモ側が成り済ましではないことを確認する必要がある。預金者に広がる不安を取り除くことを最優先に検討してほしい。

 今回の不正を招いたのは、利用者保護に対するドコモ側の意識の低さに尽きる。昨年5月、りそな銀行の口座から不正送金があった事実を把握しながら、本格的対策を打たないまま銀行口座との連携を進めてきた。

 もともと携帯電話の契約者向けだった決済サービスを昨年9月に契約者以外に広げた際、メールだけでドコモ口座を開設できるようにしたのも問題だ。利用者の拡大を急ぐあまり、本人確認がおろそかになったと批判されても仕方あるまい。

 他方、不正送金を許した銀行にも責任はある。ドコモ口座とひも付けする際、預金者からの申し出かどうか確認が甘い銀行が狙われた可能性がある。預金者保護が第一であることを肝に銘じてほしい。

 電子マネー決済を巡る不正が後を絶たない。ソフトバンク系のスマートフォン決済「ペイペイ」でクレジットカードの不正利用が発覚し、セブン&アイ・ホールディングスの「7pay(セブンペイ)」は不正利用でサービス廃止に追い込まれた。

 この背景には競争の過熱がある。電子マネーやキャッシュレス決済の事業者は赤字覚悟で利用者の囲い込み競争を展開しており、犯罪対策が二の次になっている懸念が拭えない。

 マイナンバーカード保有者がキャッシュレス決済を利用すれば最大5千円分のポイントを付与する「マイナポイント」事業などで政府が競争をあおっている面もある。新サービスは利用者保護とセキュリティー強化が前提だと再確認すべきだ。

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