コロナ後は視野にあるか  木下敏之氏 

西日本新聞 オピニオン面

天神ビッグバン

 8月末、福岡市は同市中心部の再開発事業「天神ビッグバン」の期間を2年間延長した。コロナ後の小売り、オフィスの需要の変化が不透明な中で、妥当な措置だ。しかし、このままでは新しいビルが何棟も完成しても、床は埋まらない。新型コロナウイルスが人の心を「密」を避けるように変えたからだ。時代が「密」を避けようとしているのに、容積率をアップして「密」を加速する政策は、時代の変化と真逆である。

 シニア人口が急増する福岡都市圏では、シニアが街に出かけなくなっていたが、コロナ禍がそれを加速した。外出しないので、シニアも含めてネット通販の利用が拡大した。これは、商業床の需要減少を意味する。米国に比べて遅れていた仕事のデジタル化が、コロナ禍により飛躍的に加速した。福岡の企業は東京の大企業ほどリモートワークが定着していないが、オフィスの面積は減るだろう。

 プラスの要素は、東京の企業が本社を移してくる可能性だが、それができるのはオーナー社長の会社だけだ。社員の引っ越しを伴う本社移転は簡単にはできない。東日本大震災後に本社機能の分散が議論されたが、尻すぼみになったことを忘れてはならない。

 一部の企業は本社を地方に移転しようとするが、どんな場所に移転したいのか? 食品大手のネスレの本社はスイスのレマン湖のそばの美しい場所にある。自然豊かな場所が良いのか、ミニ東京のような天神なのか。福岡市は東京の企業の幹部の心の変化を調査すべきだ。ミニ東京を希望する会社があれば、大阪市のように「5年間地方税ゼロ、その後の5年間地方税半額」を打ち出すべきである。

 忘れてはならないのが、福岡市は人口10万人当たりの新型コロナウイルス感染の陽性判明者数が、東京23区に次いで全国第2位であることだ。この原因を突き止め解決しない限り、安全とは言い難い。

 コロナ後の都心は、エンターテインメント中心に変化していく可能性もある。人々がコロナ後も天神に来たいと思わせる理由づくりとして、北天神にある県立美術館や福岡市民会館は天神中心部の新しいビルに移すべきである。両施設とも移転や建て替えは決まっているが、計画の修正は可能で、今なら、まだ間に合う。天神ビッグバンは、立ち止まって見直すべきである。

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 木下 敏之(きのした・としゆき)福岡大経済学部教授 1960年生まれ、佐賀市出身。佐賀市長(2期)などを経て現職。大学では九州経済論を担当。少子化対策や、50歳以上の文系シニア男子の就職問題(50G)などを研究している。

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