あの日、何を報じたか1945/9/17【一夜で大テント町 進駐軍に学ぼう「日本式非能率」】西日本新聞の紙面から

西日本新聞 福間 慎一

 〈相次いで本土に進駐してくるアメリカ軍隊を訪ねて、われらが一様に驚嘆させられるのは機械力を自在に駆使すること、すべての動作が実務的、能率的であることだ。戦争中でも日本国民は度々、米軍の徹底した機械力の豊富さを聞かされ、飛行場の設定などでわが方の何十分の一、何百分の一の短期間に仕上げてゆくことを聞いていた。ところが、こうした一事は実は万事にわたっていた。彼らの生活までが既に機械のように能率的である〉

 「一億総ざんげ」の後にやってきた米軍。9月に入りその姿は記事で何度も伝えられてきたが、今回は米軍の姿を褒めたたえ、「学ぼう」と呼び掛けている。

 記事の冒頭は〈見ている間にぐんぐん進駐の設営を進めてゆくことの素晴らしい能率を見ていると、日本の敗れた原因があまりにはっきり分かるような気がする〉とも。ひと月前まで「恐るるにたらぬ」と書いていた米軍への評価は、180度変わっていた。

 輸送については〈あっという間に機上の物はトラックに移され、身軽になった輸送機はもう爆音を残して離陸してゆく。(中略)まるで沖縄基地から日本本土へかけて輸送のベルトをひいたようなものである〉と描写。飛行場の人の少なさにも言及し〈わが飛行場では飛行機一機離陸するにしても始動車を呼び、転把(※ハンドル)を二、三人がかりで回すもの、車輪止めをひくもの、飛行機の周りには多くの人がたかっていた。アメリカ機の離陸には始動車も不要、転把も不要、乗員の押すボタン一つでプロペラは全開まで回転する〉と対比させている。

 この調子で記事は米軍の機械力を強調。〈屑鉄の山たちまち清掃〉という小見出しの部分では〈大型工作機ブル・ドーザー(牛眠り)は見る間に海岸に迫っている土をすくい取って〉と、まだ見慣れなかった重機を取り上げ〈東京代々木練兵場を一夜のうちに一大テント町にしてしまったのも、この工作機械である〉と紹介している。

 〈空から殺虫油撒布〉〈驚異の油送管敷設〉--記事はこうしたハード面だけではなく、規律の柔軟さにも及ぶ。〈記者はある日、シリン大佐を飛行場に訪ねた。日本の軍隊だと、その司令官に面会するのは大変な手間と時間を要する。(中略)ところがその日、シリン大佐との面会は原稿用紙の端を引き裂いた名刺大の紙切れに紹介者の走り書きのサイン一つで歩哨線もパス。わずか飛行場に入って三分間で、シリン大佐を乗せたジープは記者らの前に静かに停められた〉

 そして記事は〈新生日本に示唆〉として「反省」と「学ぶべきこと」をつづっている。

 〈わが国の官公署で一片の書類が許可の判を捺されて市民の手に戻ってくるまで一体幾日を要したかを考えてみよう。この幾日の間にアメリカであったら、おそらく数百枚の書類が処理されたであろうことを思って今更慄然たる気持ちに襲われるのである〉

 〈今後とも従来の日本式非能率さ、動脈硬化的なスローモーションが依然改められないならば、それこそ新生日本の前途を閉ざす大きな暗礁となるであろう。機械力、科学力が足らないがゆえに遥かな戦線では幾多の将兵が斃(たお)れたではないか。いま眼前に見る米軍の素晴らしい機械力、一寸の無駄もないきびきびした動作、いたずらな形式主義にとらわれない能率の良さをいたずらに見過ごしてはならない。血をもってあがない得た、これこそ良きわれらのお手本である〉(福間慎一)

   ◇    ◇

 〈〉の部分は当時の記事から引用。できるだけ原文のまま掲載。

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