売り切れ物資、避難先…台風10号の教訓を家庭、職場、地域で生かそう

西日本新聞 くらし面

新局面 災害の時代―後悔しない備え(23)

 本格的な台風シーズン早々、伊勢湾台風級と言われた10号の九州直撃予報に、肝を冷やされたと思います。少なからず犠牲者や被害が出てしまいました。

 とはいえ、九州に住む皆さんの台風に対する防災感度の高さには感心しました。福岡市内のスーパーでは9月1日の晩から2リットル入り天然水が売り切れ始め、3日夕は炭酸水しか残っていませんでした。カップ麺やパン、缶詰、養生テープ、発電機なども次々に売れ切れ。数日前から備えが進んだ様子がうかがえました。

 「先生お薦めの乾物を買い置きしていたので、慌てませんでした」と話す読者の方もいました。切り干し大根や一口サイズ以下の高野豆腐(みそ汁の具)などはスーパーなどの陳列台に残っていました。次回の備えに利用してください。

 土のうで玄関先をふさぐ。窓に養生テープを張る。植木同士をロープで固定する。公共交通機関が計画運休し、早くからホテル避難に動く人が多く、満室が続出したことにも感心しました。これは新型コロナウイルス対策に有効で、ホテルは停電時に自家発電に切り替わる所が多く、熱中症対策にもなりました。ただし、健常者の宿泊を前提とした設備のホテルでは、段差や階段が車いす客の対応を難しくさせていました。

 私のご近所は、台風が通過した7日のお昼すぎでも簡単に雨戸を開けませんでした。階下に住む日本語が上手な外国人のお宅では午後4時すぎ、市の暴風警報解除を告げる緊急速報メールの着信と同時に雨戸を開ける音がしました。

 最近は「誰も取り残されない防災」というスローガンが唱えられますが、宮崎県では、ベトナム人の技能実習生を含む4人が土砂災害に巻き込まれました。

 外国人、特に労働者は言葉の問題も含め支援態勢の不十分さから地域の災害弱者になりやすく、日本の災害時の対処法を的確に伝える必要性が改めて浮き彫りになりました。

 また、新型コロナ対策もあり自治体の避難所の数不足をどう補うのか喫緊の課題です。広域災害時の避難所不足は東日本大震災で経験済みですが、解決策はいまだ見つかっていません。

 「Go To トラベル」キャンペーンで関西旅行する予定が台風接近と重なり、格好の避難策となった方もいたようです。予想される暴風域から「早めに出る」は、大事な選択肢です。直行航空便があって地域特性を補い合える遠隔のまちと、ぜひ自治体間の相互応援協定を結ぶよう推奨します。南海トラフ地震の際も、沿岸部と内陸部とは違うタイミングで支え合えることでしょう。

 個人で、家族で、職場で、地域で、自治体でできること。報道やSNSも、それぞれ課題を振り返り、次の災害への備えに生かせる知恵を積み重ねられたら、と思った台風10号でした。(九大准教授)

 ◆備えのポイント 今回の台風対策で、売れ切れで手に入らなかった物資、次は追加したい物資、今度利用しようと思うホテルのリストなどについて、ご家族で話し合い、備えに生かしましょう。

 ◆すぎもと・めぐみ 京都府生まれ。京都大大学院修了。東京大地震研究所特任研究員などを経て、2014年度から九州大助教、20年度から准教授(男女共同参画推進室)。専門は防災教育、災害リスクマネジメント。在インドネシア日本国大使館経済班員として2004年スマトラ沖津波の復興と防災に携わる。「九州大学平成29年7月九州北部豪雨災害調査・復旧・復興支援団」メンバーとして福岡県防災賞(知事賞)受賞。編著に「九州の防災 熊本地震からあなたの身の守り方を学ぶ」。

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