検事正が報道けん制 大崎事件巡り冤罪強調は「人権侵害」

西日本新聞 社会面 中島 邦之 河野 大介

異例の言及に弁護団抗議

 鹿児島県大崎町で1979年に男性の遺体が見つかった大崎事件の第4次再審請求審を巡り、鹿児島地検の内藤秀男検事正が就任記者会見で、弁護団の主張を伝える報道について「人権侵害になる」などと述べていたことが分かった。弁護団は17日、抗議声明を出した。元裁判官で法政大法科大学院の水野智幸教授(刑事法)は「検察に好ましくない報道に対し萎縮効果を狙ったのではないか」と指摘した。

 16日の記者会見を「異例の言及」と報じたNHKニュースWEBなどによると、内藤氏は「第3次請求を棄却した最高裁決定を重く受け止めている」と説明。「第4次請求でより顕著になったが、原口アヤ子さん(93)が犯人ではないことを強調するあまりに、この人が犯人だといった報道をされると、大変な人権侵害になる」などと述べた。

 弁護団は抗議声明で「捜査機関が過去に誤った見立てのもとに冤罪(えんざい)を作ってきた自らの人権侵害を省みず、人権問題を口実に大崎事件の真実を闇に葬ろうとするもので容認できない」と批判した。

 第3次請求で、再審開始を認めた福岡高裁宮崎支部は2018年、弁護側の法医学鑑定を基に「被害者は自転車事故の影響で、近隣住民2人による自宅搬送時に出血性ショックで死亡するか瀕死(ひんし)だった可能性がある」と認定。「搬送後、何者かが遺体を牛小屋に捨てたと推認できる」として、殺人なき死体遺棄事件の可能性に踏み込んだ。

 弁護団は第4次請求書で「自宅到着時に死亡していたため、慌てた2人が遺棄したのではないか」「頸椎(けいつい)保護を知らない搬送が死を招いた。親切心で運んだ2人にも不幸な事故だった」と主張している。

 ジャーナリストの清水潔さんは「検察側主張がいつも正しいとは限らず、公益性や真実性があれば伝えるのが報道の使命。人権侵害があれば責任を問われるのは当然だが、検察が報道内容に口を挟むのは論外」と指摘した。

 鹿児島地検は、検事正の発言内容や弁護団の批判については「コメントできない」とした。

(編集委員・中島邦之、河野大介)

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