「スガノミクス」先行き多難 安倍政権から“負の遺産”継承

西日本新聞 総合面 中野 雄策

始動 菅政権(2)

 菅義偉首相が誕生した16日の東京株式市場は、上々の滑り出しをみせた。日経平均株価は一時2万3500円を上回り、新型コロナウイルスの世界的流行で暴落する前の水準に迫った。

 「アベノミクスが継承されることが歓迎されている」。市場関係者たちはこう口をそろえる。

 日銀の大規模金融緩和がけん引する形で、円安株高の流れを生み出したアベノミクス。新型コロナウイルスの流行下でも堅調な株価を支えてきただけに、8月28日午後、安倍晋三前首相の辞任意向がテレビで報じられると、日経平均株価は600円超急落し、一時は2万2600円を割り込んだ。

 アベノミクスが終わるのか-。市場にはそんな不安が広がったが、菅氏は「継承する」と言明。日本経済の成長を下支えする規制改革を強力に進める方針も強調し、市場を落ち着かせることにひとまず成功した。

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 「新型コロナウイルスの感染拡大、戦後最大の経済の落ち込みに直面している。危機的な状況に全身全霊をかけて取り組んでほしい」。菅首相は18日、首相官邸に各省庁の事務次官を集め、険しい表情でハッパを掛けた。

 コロナ禍で実質国内総生産(GDP)は500兆円を割り、第2次安倍政権発足前に後戻り。飲食や旅行など多くの業界が需要減に苦しみ、破綻の足音におびえている。コロナ関連の解雇や雇い止めは5万人を超えても増勢が止まらない。

 日本経済の長期停滞が危ぶまれる中、金融緩和の縮小は円高株安を招きかねない。目先の経済対策には歳出の拡大も必要になる。金融緩和と財政出動が支えたアベノミクスは「継承せざるを得ない」(エコノミスト)のが実情だ。

 金融緩和の先導役を務める黒田東彦日銀総裁は、安倍前首相の退陣で早期辞任論も一部で浮上したが、17日午後の会見で菅政権と「しっかり連携しながら政策運営したい」と強調。大規模緩和を続けるとのメッセージを国内外に発信した。

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 前政権から受け継いだ「負の遺産」の後始末も菅氏に重くのしかかる。

 コロナ対策のための大規模な財政出動で、政府の2020年度の歳出総額は160兆円に上り、債務残高は税収の約15年分に相当する964兆円に増える見込みだ。コロナ禍が長引けば長引くほど歳出圧力は強まり続け、借金もかさむ。

 菅氏は総裁選中にテレビ番組で、将来の消費税増税の必要性に言及したが、翌日に「今後10年ぐらいは必要ない」と慌てて修正。財政健全化の道筋は示せておらず、財務省幹部からは「社会保障や財政再建と一緒に消費税を議論してほしい」と本音が漏れる。

 アベノミクスは「第3の矢」とされた成長戦略が道半ばで、金融緩和の出口や財政再建の道筋も描けないまま終わりを迎えた。菅氏はこうした難題も引き継いだ格好だが、解決策についての言及は乏しい。

 デジタル化、地方銀行の統合再編、携帯電話料金値下げ…。菅氏が掲げる政策は具体的だが、「スガノミクス」の全体像は見えないまま。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストはこう訴える。

 「今のところ、菅氏の成長戦略に関する政策はすべて小粒だ。足元の消費を喚起する経済対策から負の遺産への対処まで、経済再生の大きな方針をなるべく早く明らかにしてほしい」 

(中野雄策)

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