料理配達員の過酷労働、中国で問題に 「逆走や信号無視をしないと…」

西日本新聞 国際面 坂本 信博

【あなたの海外特派員】

 外出自粛が続いた新型コロナウイルスの影響で、「ウーバーイーツ」など、スマートフォンで注文を受けて配達員が飲食店で料理を受け取り配送するサービスが日本で広がりつつある。福岡市の女性から「先行する中国の現状を知りたい」という声が、海外特派員が読者の調査依頼にこたえる西日本新聞「あなたの特派員」に寄せられた。中国では、スマホ決済が浸透したこの数年で「外売(ワイマイ)」と呼ばれる料理宅配も急速に普及。IT系大手2社による競争が激化し、配達員約700万人の過酷労働が社会問題化している。

 配達員不足に罰金、事故

 荷台に黄色や水色が目印の配送バッグを積み、同じ色のヘルメットをかぶる配達員の電動バイクが、歩道の人々の間をすり抜けるように行き交う。北京をはじめ中国の都市部で終日、そんな光景を目にする。黄色が中国のIT大手、騰訊控股(テンセント)が筆頭株主の「美団点評(メイトゥアンディアンピン)」の配達員、水色がIT大手、アリババ傘下の「餓了麼(ウーラマ)」の配達員だ。

 中国メディアによると、外売の利用者は2019年時点で約4億6千万人。6536億元(約10兆1300億円)に及ぶ市場の約95%を両社が占める。顧客の趣味や生活習慣などがビッグデータに蓄積され、多様なビジネスに活用される。両社がサービス向上を競い合い、業界全体の平均配送時間は3年間で10分短縮されたが、一方で配達員の交通事故が急増する。

 上海市当局の17年上半期の統計によると、2・5日に1人のペースで配達員が死傷。四川省成都では、18年の7カ月間に約1万件の交通違反と196件の事故が発生し、死傷者は155人に上る。

 客がスマホで注文すると、衛星利用測位システム(GPS)の位置情報を基に人工知能(AI)が配送先までのルートを割り出し、所要時間を計算する仕組み。配送時間の短縮はシステムが進化した成果でもあるが、最近問題視されているのが、配達員の評価システムだ。

 北京の街角で、複数のドライバーに実情を聞いた。

 配達員歴2年の男性(46)は「配達予定時間を8分過ぎると1件9元(約140円)の報酬から罰金として2元(約31円)マイナスされる。1日40件くらい注文を受けているけど、翌日に割り振られる注文が自動的に減らされる」。勤め先の不動産会社がコロナ禍で倒産し、8月に配達員を始めたばかりの男性(37)は「担当エリアを50人ほどのチームで受け持っている。遅配すると、連帯責任で同僚の評価も下がる」と教えてくれた。

 2人とも「逆走や信号無視をしないと、間に合わない時もある」と明かした。事故を起こした配達員が100万元(約1550万円)の損害賠償を請求されたケースもあるという。

 こうした配達員の実態がインターネット上で話題になり、両社は9月上旬、利用者のスマホアプリに特典付きで「5~10分程度の遅延を許す」というボタンを設けるなどの対策を表明した。

 ただ、利用者がどのサービスを選ぶかは「食品の安全性」と「速さ」が決め手。コロナ禍が追い風となって宅配の需要が増す中、配達員は慢性的に不足する。ヘルメットと配送バッグを150元(約2300円)で買い、先輩に半日だけ同行して仕事を始めたという30代の男性は「稼ぎを増やすには、配達を急いで注文をこなすしかない。交通ルールは気にしていられない」と話すと、バイクで走り去った。 (北京・坂本信博)

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