「貯金崩しているが…」大企業の非正規、国の支援置き去り

西日本新聞 一面 久 知邦

 全国展開の大手飲食店などで働く非正規労働者が、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休業手当を受け取れない事態が置き去りになっている。企業側が負担感から支払いをためらうケースや、シフト制で勤務日が定まっていないことを理由に休業扱いにされないケースもあるという。労働者に直接支援金を給付する制度が7月に創設されたが、「大企業」は対象外。制度の改正を求める声も上がる。

 「どうやって生活していったらいいのか…」

 福岡や佐賀などにも展開する大手飲食店の東京都内の店舗で、アルバイトとして働く20代男性は話した。店は緊急事態宣言中の4~5月は休業。6月に営業再開したものの、感染再拡大もあってシフトは半分以下に減らされた。もうすぐ振り込まれる8月の給料は、コロナ禍前の約20万円から激減し、2万円ほどになる見込みという。

 休業手当はシフトが決まっていた4月分に限り、6万円を受け取った。それ以降は「休業や時短営業は会社のせいではない」として拒まれている。支払いを求め続けるとシフトに入れてもらえなくなった。「貯金を崩して生活しているが、2~3カ月で尽きる。不安でいっぱい」と漏らした。

 国は企業に休業手当の支払いを促すため、雇用調整助成金の対象に非正規労働者も加え、大企業への助成率を2分の1から最大4分の3まで拡充した。ただ、飲食業界は内部留保が少ないとされる。新型コロナの影響が長期化する中でコスト増を避けるため、支払いをためらうケースが少なくないという。

 労働政策研究・研修機構の調査では、勤務先から休業を指示された603人の24%に当たる145人が「休業手当が全く支払われていない」と回答。そのうち約70%を非正規労働者が占めた。業種別では飲食店、宿泊業が多かった。

 厚生労働省によると、労働基準法は企業の都合で休業した場合に手当の支払いを義務付けているが、緊急事態宣言や自治体の要請に基づく休業はこれに当たらない可能性もある。シフト制の非正規労働者は勤務日が確定していないため、企業に支払い義務があるとは言えず、労働基準監督署による指導も難しいという。

 7月、休業手当を受け取れない労働者に賃金の8割を直接給付する「休業支援金」制度が始まったが、対象は中小企業に限られる。労働組合「首都圏青年ユニオン」(東京)の担当者は「大企業20~30社の従業員から相談を受けている。全国展開の飲食店は1社につき千人単位で非正規を抱えており、支援から漏れている人は数万人に上る可能性がある。正社員にだけ休業手当を払うなど非正規差別もある。国は休業支援金の対象を見直すべきだ」と話す。 (久知邦)

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