原点は「国民の幸せ」のはず 山内進氏

西日本新聞 オピニオン面

◆誰のための税?

 吉江正春先生は、元九州北部税理士会会長で平成元(1989)年に、西日本新聞社から『誰がために税はある』という本を出版された。福岡商工会議所の税制委員でご一緒したことがある。税制とは納税者のためのものだという、先生の理念が本のタイトルに表れているようだ。

 先日、留学生が税のことで頭を抱えていた。所得税法では、アルバイト収入は130万円まで課税されないし、住民税の所得割は124万円まで課税されないと思っていたという。なのに住民税が課税されると言われたからだ。所得割は前年の所得金額に応じて課税されるもの。私は所得金額にかかわらず定額で課税される均等割もあり、収入100万を超えると住民税が課税されることを説明した。所得税と住民税(均等割・所得割)では計算方法が異なり、留学生には、難解なのだ。

 日本人学生にも質問される。「いくらバイトしたら所得税がかかりますか?」。留学生と同じ130万円だ。ただ親の扶養親族でいるためには、103万円を超えてはならない。この理解も難しい。頭が混乱する。所得税法上の配偶者控除、配偶者特別控除額も、平成30年分以後は居住者の所得により金額が異なり複雑になった。これらの控除には、所得制限があり勤労意欲がそがれてしまう。

 もっと頭が痛いのは、住宅関係の借入金控除だ。新築か増改築かで控除が異なるなど、規定の種類や添付書類が多すぎる。ああ、日本の税制、難しすぎるよ。

 日本国憲法では、第84条に租税法律主義が規定されている。その起源は欧米が市民革命により勝ち取ったものだ。その中に課税要件法定主義、課税要件明確主義がある。簡単に言うならば、課税する要件は法律で定め、明確でなければならないということだ。また戦後日本の税法を創(つく)ったシャウプは税制の簡素化を述べた。つまり、納税者に、わかりやすく規定しなさいということなのだ。なのに日本の税制は複雑だ。

 欧米にある給付付き税額控除は魅力的だ。所得が増加すると税額控除額が増加し税金が戻るというのだ。働く意欲がモリモリ湧いてくる。日本の税制は、『誰がために税はある』という文言を胸に刻み、国民の幸せになる税制、わかりやすい簡素な税制という原点に戻らなければならない。

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 山内 進(やまうち・すすむ)福岡大商学部教授 慶応大で博士号を取得し福岡大へ。客員研究員としてオックスフォード大に留学経験がある。税理士・会計士補。福岡県生活衛生営業審議会会長などを務める。

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