「家賃支援給付金」複雑な契約関係が申請の"壁"

西日本新聞 一面 竹次 稔

申請後も審査に時間

 国が7月に受け付けを始めた「家賃支援給付金」の利用が伸び悩んでいる。新型コロナウイルスの感染拡大で収入が激減した個人事業主などの家賃負担を軽減する目玉政策だが、「申請に必要な資料が多く、準備が難しい」と悩む声が西日本新聞「あなたの特命取材班」に寄せられた。家主との関係がうまくいっていないなど複雑な契約関係が申請の「壁」になっているという。申請後も決定まで時間を要しており、国は審査体制の強化を急いでいる。

 声を寄せたのは、福岡県内で水産品を販売する50代男性店主。売上高が前年同月比で半分以下となった月もあり、減収要件は満たしている。

 5年ほど前、店が入る建物を所有する不動産会社から退去を求められた。退去費用が折り合わず民事調停は不調。そのまま営業を続けてきたが、家主との関係は良くないままだ。

 申請で特に重要なのが、不動産契約が継続していることを証明する書類だ。

 店主がこの建物に引っ越してきたのは1990年代で、手持ちの賃貸借契約書は当時のまま。この間、家主は2回代わった。契約書が未更新だと、家主と借り手が記入する新たな証明書の作成、添付が必要だ。

 「経営が良くないことを家主に知られると、また退去を求められるかも」。無視される懸念もあったが、総額約40万円の給付金は営業維持に必要と考え、記入書類を不動産会社に送った。16日後、2枚の書類がようやく届いた。

 「家主ともめていて、証明書をもらうのは嫌だと悩む事業者から相談を受けたことがある」。福岡県久留米市の行政書士、神野聖二郎さんはこうした事例は少なくないと説明。借りている期間が長期にわたり、そもそも契約書がないケースもある。

      ■

 7月14日に受け付けが始まった給付金の予算総額は全国で約2兆円。経済産業省中小企業庁によると、給付決定額は今月15日時点で約1150億円と、予算総額の6%弱にとどまる。書類がそろわず、申請に至っていないケースが多いことも一因にありそうだ。

 申請しても、審査に時間がかかっている。全国の申請件数は同日時点で約48万件だが、給付決定は約13万6千件。「書類の添付漏れなどが多くある」(同庁総務課)という。

 神野さんによると、7月に申請したのに、給付決定が今月上旬にずれ込んだケースも。途中、書類不備を指摘されたが「不備を指摘するメールを読んでも、どこが問題なのか分からなかった」と首をかしげる。

 同じように中小企業などを支援する国の持続化給付金に比べ、必要書類は格段に多い。「もう少し手続きを簡略化してほしい」。神野さんは訴える。5月に申請受け付けが始まった持続化給付金の場合、予算額約5兆円のうち、4兆円を超える給付実績がある。

 経産省は11日、民間企業に委託している家賃支援給付金の審査体制を、現在の5千人から6千人に拡充すると発表。事務処理の迅速化を目指す。

 福岡県は、国が給付決定した証明書があればさらに上乗せする「家賃軽減支援金」を用意。国の支給が伸び悩んでいるため、16日時点で想定した件数(予算総額82億円)の約2%分しか受け付けを終えていない。 (竹次稔)

 家賃支援給付金 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今年5~12月の1カ月の売上高が前年比50%以上減るなどした中小企業(資本金10億円未満)、個人事業主が借りている建物などの賃料の一部を支給する事業。法人に最大600万円、個人事業主には同300万円が支給される。

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