「くるめシティーブラス」追悼の思いを胸に演奏会

西日本新聞 筑後版 玉置 采也加

8月に急逝、団長で指揮者の村田努さんへ感謝込め

 福岡県久留米市を拠点に活動する社会人や学生の吹奏楽団「くるめシティーブラス(KCB)」による「街なかコンサート」が20日、市中心部の六角堂広場で開かれた。実は公演直前の8月下旬、団長で指揮者の村田努さん(52)が急逝しており、団員は「村田さんが準備してきた公演を成功させる」と、追悼の思いを胸にステージに立った。

 KCBは1998年、村田さんが「自由に選曲や公演ができる楽団をつくりたい」と設立。仕事も自営業に替えて音楽に専念した。現在は社会人や主婦、学生など約40人の団員がいる。

 中学からホルンを演奏してきた村田さんは、KCBでは指揮者として団員をまとめた。勉強熱心で、本で学んだ指揮のやり方や音楽の解釈を、楽譜やノートのあちこちに書き留めていた。作曲者に直接連絡し、曲をどう解釈したらいいのか尋ねることもあった。

 KCBの練習は、仕事が忙しい人も参加しやすいよう、週1回にした。子連れの団員も歓迎し、好きな音楽を誰もが一生楽しめるような楽団を目指した。

 村田さんとの別れは突然だった。8月25日未明、市内の自宅で村田さんが妻千秋さん(52)に腕のしびれを訴えた。病院に向かったが7時間後に息を引き取った。脳幹出血だった。

 4日後の葬儀では、KCBの団員が引退したメンバーも含む67人で、村田さん夫妻の結婚式でも披露した「ウィ・アー・オール・アローン」など5曲を演奏して村田さんを見送った。

 「人生を懸けるほど打ち込んだバンドのメンバーに見送られて喜んでいたんじゃないかな」。自身も団員の千秋さんは葬儀を振り返る。練習ではどんなに熱が入っても決して声を荒らげない穏やかな人柄だった。音楽を愛する情熱は人一倍で、持病のC型肝炎で熱や痛みに悩まされた日も「練習に行くと不思議と元気になりました。病気を知らない団員もいたくらい」と千秋さんはほほ笑む。

 「音楽は聴く人がいて初めて成立する芸術」との信念で、多くの観客に来てほしいと、無料コンサート開催にこだわってきた村田さん。今回の「街なかコンサート」も、亡くなる直前まで楽しそうに本番に向けた準備をしていたという。

 そんな村田さんを突然失い、団員はコンサートを開くべきか迷った。だが公演を待つファンと、何よりも本番を楽しみにしていた村田さんのために、予定通り開催しようと決断した。

 20日のコンサートの指揮は、団員の川口剛さんと豊福伸一郎さんが務めた。ディズニー映画「リトル・マーメイド」の劇中歌「パート・オブ・ユア・ワールド」などアンコールも含めて11曲を演奏した。

 村田さんをしのぶ献花台の前では、目を真っ赤にしてたたずむ人の姿も。数年来通い続けている女性ファンは「村田さんが団長だったから、こんなに温かい演奏をするバンドができたんでしょうね」と話した。

 千秋さんは「人と音楽。村田が大切にしたものを今日は紹介させていただきました。開催できたことだけでうれしいです」とあいさつした。終了後、豊福さんは「演奏中に村田さんがいなくなったことをじわじわと実感した。いかに大きな存在だったかを思い知らされました」と語った。

 KCBは、来年の4月の演奏会に向けて、村田さんの思いを胸に再出発する。 (玉置采也加)

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