沖縄の基地問題 まず寄り添う姿勢見せよ

西日本新聞 オピニオン面

 菅義偉新政権の発足で注目される政治課題に沖縄の基地問題がある。安倍晋三前政権下、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡って、政府と沖縄県の関係は極度に悪化した。その不信の構図に変化は生じるのだろうか。

 安倍前首相は「沖縄に寄り添う」と口では言いながら、辺野古移設を「唯一の解決策」として譲らず、知事選や県民投票で再三示された「辺野古移設反対」の民意を無視して移設工事を強行、土砂投入に踏み切った。一方、沖縄県は数々の訴訟を提起し工事の中止を図った。

 首相が交代したとはいえ、沖縄県側は菅新政権に過度な期待はせず、むしろ警戒を強めている。菅首相が安倍政権の官房長官として、沖縄に厳しい態度を取り続けてきたからだ。

 首相は官房長官時代、辺野古移設を「粛々と進める」という表現を使い、当時の翁長雄志(おながたけし)知事(故人)を「上から目線だ」と怒らせたことがある。

 今回の自民党総裁選の討論会でも、菅首相は「国と国との約束。普天間飛行場の危険除去を考え、辺野古への建設は進めていくべきだ」と、これまでと全く変わらない見解を示した。

 また首相は官房長官時代の会見で、沖縄振興予算と沖縄の基地受け入れとの関係について「リンクしている」と述べたことがある。振興策と基地負担のリンクは金で基地を押し付ける露骨な「アメとムチ」であり、歴代の自民党政権も認めるのは避けてきた。そこにあっさり踏み込むところに菅首相の強権的な政治手法が垣間見える。

 悲惨な地上戦の舞台となり、戦後も長く米軍による占領統治が続いた沖縄には、今なお日本国内の米軍専用施設の約7割が集中する。県民は過度の基地負担に苦しんでいる。

 こうした現実と、苦難の歴史を知る自民党の政治家たちは、たとえ沖縄に基地負担を求める政策を進めるときでも、沖縄の痛みを理解するところから始めてきた。こうした謙虚な姿勢が安倍政権以降失われている。

 日米地位協定の改定についても安倍政権は消極的だった。沖縄のために米国と交渉するのではなく、米国のために沖縄に我慢させようという姿勢では、沖縄の信頼は得られない。

 辺野古移設に関しては、埋め立て場所の地盤が極端に軟弱であることが判明して工事費が膨張するなど、政府の計画は破綻寸前だ。新政権は「唯一の解決策」などと辺野古に固執するのはやめ、まずは沖縄と真摯(しんし)に対話し、信頼関係を立て直すことから始めるべきではないか。

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