なぜ?子ども食堂に政府備蓄米届かず 無償制度なのに…実績わずか1件

西日本新聞 一面 竹次 稔

手続き改善、申請徐々に増加

 農林水産省が5月末に導入した政府の備蓄米を子ども食堂に無償で交付する制度の利用がなかなか広がらない。新型コロナウイルス感染が拡大する中、子ども食堂の存在が再認識されて設けられ、西日本新聞「あなたの特命取材班」にも「生活困窮家庭の食料不足は深刻」として評価する声が届いていたが、これまでの交付実績は全国でわずかに1件のみ。手続き面に課題がありそうだ。

 子ども食堂への無償交付は、備蓄米を学校給食に活用する場合に無償交付する制度を拡充して実現した。6月末時点の備蓄米は2019年産まで5年分の約91万トン。子ども食堂向けに提供するのは「できるだけ新しいもの」(同省穀物課)との方針で、19年産米だという。子ども食堂での平均的な米の消費量から計算し、上限は1団体60キロだ。

 「いい制度だと思うが、現場では活用されていない」。子ども食堂へ食料を提供してきた女性から、意外な反応が特命取材班に寄せられた。

 問題は手続きにあった。

 当初、各地域の社会福祉協議会が要望を取りまとめて農水省に申請する仕組みだったが、生活資金の貸し付け業務などで多忙な社協側から反発が出たという。子ども食堂側も保管倉庫に受け取りに行く手間が負担となっていた。

 せっかくの制度が利用されない。農水省は改善に動いた。制度発表から3カ月が経過した8月末、社協を介さず直接申請できる方法に変更。希望者には無償で運送する選択肢も増やした。同省によると、今月中旬までに全国から数十件の相談が寄せられ、申請も徐々に増えているという。

 それでも、支援の現場から見れば課題は残る。精米を生活困窮者に直接渡すことは認められていない。「米を炊いて食事として提供することが重要な交付条件」(同省穀物課)という。「コロナの影響で再開を見合わせている子ども食堂は少なくない。残念ながら使い勝手が良くない」と福岡県内のフードバンク関係者は打ち明ける。

 筑紫女学園大の大西良准教授(児童福祉)は「ひとり親世帯など米そのものの需要は各地にある。転売される懸念は残るが、直接提供する選択肢も検討していくべきではないか」と指摘している。

 無償交付の問い合わせは、農水省穀物課=03(3502)7950。 (竹次稔)

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