GoToサイクリング 堀田正彦

西日本新聞 オピニオン面 堀田 正彦

 新型コロナウイルスの影響で今年は多くの自転車イベントもカレンダーから消えた。身近なところでは大分県のツール・ド・国東や、熊本県の天草下島一周サイクルマラソンなどが中止となった。

 自転車は巡航中、「密」とはほぼ無縁だ。しかし、開会式やエイド(補給地点)は違う。例えば国東には二千数百人が参加する。開会式の密度は推して知るべしだし、エイドもピーク時は混雑する。大会ボランティアも感染の危険から守らねばならない。主催者が抱く当然の懸念だ。

 5月開催の予定だった国東は参加受け付け中の3月に、いったん11月への延期を決めたが、結局7月に開催を断念した。申し込み済みの人への連絡、参加を取りやめる人への返金の手配、募集代行業者との調整など、事務局は事後処理に忙殺された。返金は1件ずつの振り込みで、多大な手間暇を要したという。

 事務局によると、申し込みが済んでいた約1800人のうち、離脱したのは約300人。なお1500人が参加の権利を維持し来年を期している。私もその一人で、それほど自転車乗りは大会を渇望している。とはいえ感染終息が見通せない中、来年も予断を許さない。準備には半年かかるため、開催時期も含めた決断のリミットが12月に迫る。

 そんな中、9月27日に熊本県阿蘇市で、10月18日に大分県佐伯市で大会開催が予定されている。

 阿蘇は、熊本地震で不通となった国道57号の北側復旧ルートを走る。10月の開通を前に、二重峠(ふたえのとうげ)トンネル(3・7キロ)を主舞台に復興の歩みに触れる。わずか40キロのコースだが、九州在住者限定500人の定員はすぐに埋まった。

 佐伯は通常の5コースを二つに減らし、出場者数も例年の1割に絞るという。大分県内在住者限定で、接触確認アプリを入れたスマートフォン必携という徹底ぶり。福岡県に住む私は参加できないが、心から成功を祈っている。

 見慣れた近所の道を多くのスポーツ自転車が疾走する非日常の光景は、年に1度のお祭りだ。主催者とは別に住民が独自エイドを設けるケースもある。佐伯の大会、最後の峠へ向かう道端で振る舞われたしそジュースの味は、地元の人たちとの一体感と共に記憶に刻まれている。

 政府のイベント制限は緩和された。だが、防疫と開催のはざまで主催者の葛藤と苦労は続く。それは長く厳しい峠道を上る山岳ライドにも似て並大抵ではない。それでもペダルを踏みやめなければ必ず峠に至る。終わらない坂はない。 (マルチ情報センター長)

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