子に異変…鉛筆の握り方、大丈夫?「体と精神は表裏一体の関係」

西日本新聞 くらし面 佐藤 弘

子どもの異変 鉛筆の握り方、大丈夫? (下)

 児童の鉛筆の握り方に不安を抱いた長崎県佐世保市立広田小の福田泰三教諭(53)。昨年から正しい握り方の定着に取り組む中、長崎百合野病院(同県時津町)の理学療法士、村田広志さん(34)の指導を受け、握り方と併せて姿勢を正す必要もあることを知った。

 「ピン、ペタ、ポン」。広田小1年の教室で、授業の開始前に唱えられるかけ声だ。背中をピンと伸ばし、足は床にペタッと着けて、手を膝の上にポンと置く。狙いは児童に正しい姿勢を意識させること。

 それでも数分たつと姿勢が崩れる子がいる。共通するのは足の位置。床に足の裏が着かず、前に投げ出していたり、手前に引いて爪先立っていたり。そして例外なく、鉛筆を正しく握ることができていなかった。

 なぜ、足の位置が大事なのか。それは「下半身が上半身を支えられなくなるから」と村田さん。

 私たちの上半身や骨盤を支えるのは、主に抗重力筋といわれる腹筋や背筋、殿筋(おしりの筋肉)など。だが、足の位置が悪くて正しい姿勢を保てないと、頭が前に出て猫背に。腹筋や殿筋にも力が入らず、骨盤の位置が定まらない。

 そんな不自然な姿勢の中でも、体はバランスをとろうとするのだが、それはいろんな筋肉に不自然な緊張を強いることになる。その結果、鉛筆は正しく握れないし、肩凝りなどの不調にもつながるというのだ。

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 姿勢の悪い子は、鉛筆の握り方だけでなく、ノートを軽く押さえるもう片方の手の使い方にも問題があった。右利きの場合、姿勢の悪さで左の二の腕に体重がのってしまうと、ノートを押さえるはずの手のひらに適度な力が入らない。姿勢を保持できなくなり右肩が上がる。すると右手に力が入り過ぎ、鉛筆の正しい握り方を難しくさせる。

 「巻き肩」も関係してくる。左右の両肩が体の前方内側へ入り込んだ状態をそう呼ぶ。自宅でソファに寝転がって、ゲーム機やスマホなどを操作する時間が長い子たちは、総じて巻き肩になりがちだという。

 「体と精神の状態は表裏一体の関係にある。特に小学生になり、座る時間や鉛筆を握る機会が増える時期に体が整わなければ、活動意欲にも影響が及ぶ恐れは十分考えられる」。村田さんは、そう警告する。

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 とはいえ、「きちんと鉛筆を握りなさい」「まっすぐ座りなさい」と言い聞かせるだけでは、なかなか直らない。姿勢は、日頃の習慣の積み重ねだから。

 まずは児童に姿勢を意識させ、背筋が伸びるやり方を教えること。そこで村田さんが授業前にやろうと提案したのが、自ら考案した「親指引っ張り体操」や「タオルで背筋伸ばし体操」だった。

 福田教諭は、こうした改善策も含めた児童の現状を、学級通信や家庭訪問、授業参観などの学校行事を通じて保護者に伝達。問題意識を共有し、家庭での取り組みを求めている。

 ただ、そうした努力の一方で、一度ついた癖を直すことの難しさを痛感する。年々、子どもたちの体の動きや使い方が下手になっているとも感じるという。

 保護者から子どもの成長過程を聞き取る中で気づいたのが、ハイハイや手づかみ食べなどを経験した時間の短さ。手の巧緻性を高める砂遊び、積み木、全身にかかわる外遊びも絶対的に不足していた。

 そこで、今年も1年生を担当した福田教諭は今、体育の授業にも力を入れている。運動不足による腹筋や殿筋の未発達が、鉛筆の握り方や姿勢の悪化が根気不足、ひいては学力低下に関係すると考えるからだ。

 姿勢や鉛筆の握り方は、その子の一生に付いて回る。「問題意識がなければ、目の前に異常があっても気づかない。まずは、自分の子どもが鉛筆をどう握っているか、姿勢はどうか、注意して見るところから始めませんか」。福田教諭はそう呼び掛けている。 (佐藤弘)

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