あの日、何を報じたか1945/9/24【高まる読書熱 「英語会話」は売り切れ ここにも自由主義の胎動】西日本新聞の紙面から

西日本新聞 福間 慎一

 〈敗戦の痛苦を克服し、日本はいま新文化建設への第一歩を踏み出そうとしている。欧州大戦直後、食は乏しく慰安や娯楽もない時、一般に芸術や学問が盛んになり、本を読む人が多くなったといわれるが、現在の日本もそうした状態にあるのではないだろうか〉

 終戦後、市民の間で読書熱が高まっている現状を福岡市内の書店と福岡県立図書館に取材した記事。欧州大戦、つまり第1次世界大戦後と、約30年後の「現在の姿」の状況が似ている、と指摘している。

 取り上げた現場は3カ所。まず、二つの代表的な書店の状況を以下のように伝えている。どちらも混雑、英語、実用的、がキーワードだ。

 〈丸善 新刊書の入荷は印刷機や紙の焼失によって全然見込みのつかぬ今日、店に並べられているものは数少ない古本である。(中略)今までは店の隅の方に置いてあったような古い洋書が店の三分の一を占めている。終戦後、これら横文字の書は急に売れ始め、語学、特に英語の本はたちまちなくなり、大きな本の下積みになっていた中学一、二年のリーダーも四、五日で店から姿を消し(中略)思想、経済、法律、商業という順に買われてゆく。これに反し、戦争中、最も多く売れた軍事、航空関係の本は当然のことではあるが全然求める人がなくなった〉

 〈山内書店 現在持っている四十万冊の本の中、三分の二が洋書であるため、終戦後における客は一日千人を超えるという状態で(中略)実用的な英語の初歩や中学一、二年のリーダーがまたたく間に売れていった。思想方面の本としては全て自由主義的なもので、政治経済なども学問的なものを求める人はあまりない。客の中で一番多いのは復員軍人で、彼らはいかにして食べるかという生活の問題を大変気にしているので、必然的にそれの参考になるようなものを求めてくるわけである〉

 戦時中は福岡市・天神にあった福岡県立図書館は6月の空襲で全焼。現在の修猷館高校に仮事務所を設けていた。

 〈福岡図書館 空襲で十三万冊を一夜で焼失した本館は、わずかに疎開させていた二千冊の貴重な郷土資料をもって修猷館に仮事務所を置き、篤志家の寄贈と買い入れによって次第に集まった書籍で動員学徒文庫、勤労青年文庫を新設する予定であったが、終戦により再び新しく出発することになった〉

 図書館の将来について館長は次のように語っている。

 〈決して今までの図書館であってはならない。従来の図書館はあまりにも大衆的であり慰安的でありすぎた。広い書庫の中には小説類が最も多く、児童室に来る子供らは漫画に読みふけるという状態で、また館の方でも多くの本を持っているということ、一日に幾人の閲覧者があるなどということに重きを置いたものである〉

 親しみやすい蔵書でにぎわいを創出--。現代の視点から見れば、戦前の県立図書館はこういう表現で運営されていたという状況だったようだ。館長は図書館が担うべき役割を力強く語っている。

 〈しかし、これからの日本にはそのような安易なものは許されない。新しく力強い日本として立ち直るには総(すべ)てが大きな使命を持った人として、良き指導書と日本の伝統を守っていく新しい文化建設に役立つ本を集めて、少数の人であっても、本を読むことによって向上していくような人に読ませ、社会教育の一端を担うのが図書館の使命である〉(福間慎一)

   ◇    ◇

 〈〉の部分は当時の記事から引用。できるだけ原文のまま掲載。

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