ハンセン病継承にコロナの影 療養所訪問や交流制限…高齢化追い打ち

西日本新聞 一面 一瀬 圭司

「残された時間少ない」

 ハンセン病で「強制隔離」された当事者が高齢化で減っていく中、新型コロナウイルスの感染拡大による国立ハンセン病療養所への訪問制限が、過去の過ちを繰り返さないための「継承活動」に深刻な影を落としている。療養所関係者は感染リスク回避のため「やむを得ない」と受け止める一方、啓発の継続に向けた取り組みに乗り出した。

 「8月恒例の盆踊りも中止になった。地域の子たちに良い啓発の場だったのに」。菊池恵楓園(熊本県合志市)の入所者自治会長、志村康さん(87)は悔しがる。交流の場として地域に開放する盆踊りは毎年にぎわっていた。

 全国13カ所の療養所は入所者の生活の場であるとともに、人権学習の場でもある。小中学生らは国による強制隔離の体験談に耳を傾け、家族とのつながりを断たれた遺骨が眠る納骨堂を巡り、学びを深めた。

 だがコロナですべてがストップした。各療養所は3月ごろから受け入れを中断。感染状況を見極めた上で、敷地内の資料館の見学再開に踏み切った施設はあるものの、人数を制限しているため訪問者は少ない。

 年間4千~5千人が訪れる恵楓園、星塚敬愛園(鹿児島県鹿屋市)の本年度の受け入れは、9月23日現在でゼロ。再開のめどは立っておらず、両園の担当者は「入所者の安全を考えれば当然の判断だが、もどかしい」と打ち明ける。

 全国の入所者1090人(5月1日時点)の平均年齢は86・3歳と高齢化が著しい。肉声を聞けない時代が刻一刻と迫る中、研究者や支援者も頭を抱える。恵楓園の入所者の絵画を収集・保存し、聞き取りを続ける元熊本市現代美術館学芸員の蔵座江美さんは「ただでさえ残された時間は少ない。そこにコロナが追い打ちをかけ、貴重な時間を奪われた」と嘆く。

 一方、新たな取り組みも始まっている。恵楓園は過去に撮影した入所者の講話をDVDにまとめ、10月から貸し出す方針。国立ハンセン病資料館(東京)もオンラインによる人権学習の受け付けを開始した。

 ハンセン病問題に詳しい内田博文九州大名誉教授は、昨年の元患者家族補償法施行をきっかけに、国と元患者、家族の間で差別の解消を目的に始まった政策協議の重要性を指摘した上で、国の関与を高めるべきだと主張。「強制隔離を知る当事者の語りが難しくなってきた今、国として証言を記録し、啓発に生かす具体策を示すべき時期にきている」と語った。

(一瀬圭司)

 

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