桜を見る会 なぜ「再調査」を拒むのか

西日本新聞 オピニオン面

 巨額詐欺事件となる預託商法を繰り広げていた渦中の人物がなぜ、首相主催の公式行事「桜を見る会」に招かれたのか。政府は徹底的に再調査すべきだ。

 菅義偉首相は「桜を見る会」の予算を来年度は要求しない意向を示しているが、それで済まされる問題ではない。

 磁気ネックレスなどの預託商法を展開し、約2400億円の負債を抱えて破綻した「ジャパンライフ」(東京)が、債務超過の事実を隠し顧客から多額の資金を詐取したとして、警視庁などの合同捜査本部は元会長の山口隆祥(たかよし)容疑者らを逮捕した。

 捜査本部は44都道府県の高齢者ら延べ約1万人から計約2100億円を違法に集めたとみている。事実とすれば、老後に備えた資金などを狙った許し難い犯罪だ。全容解明を急ぎ、被害の救済にも手を尽くしたい。

 見逃せないのは、山口容疑者が2015年に当時の安倍晋三首相が主催した「桜を見る会」に招待されていたことだ。この問題は国会でも取り上げられ、安倍前首相は山口容疑者との関係について「一対一で会ったことはなく、個人的な関係は一切ない」などと否定していた。

 招待状を区分する番号から首相推薦枠だったのではないか、との疑惑も浮上した。当時の官房長官だった菅首相は「招待者やその推薦元は個人に関する情報で、招待されたかどうかも含めて回答を差し控えている」と繰り返してきた。

 しかし、ジャパンライフは首相からの招待状を勧誘セミナーの宣伝に使っていた。今回の逮捕容疑は「桜を見る会」に山口容疑者が招待された後の17年のものだ。「招待状のおかげでたくさん契約が取れた」と証言する同社の元店長もいる。大勢の被害者がいる詐欺事件として捜査当局が動きだした以上、「個人情報」を理由に説明を拒む姿勢は通用しないのではないか。

 にもかかわらず、加藤勝信官房長官は「名簿が保存されていない。個々の招待者について改めて調べても確たることは申し上げられない」と再調査はしない考えを表明した。政権にとり不都合なことは蒸し返さない。そんな宣言にも聞こえる。

 税金で賄う「桜を見る会」は安倍前首相の公私混同が厳しく問われた。野党議員が資料要求した当日に招待者名簿がシュレッダーで廃棄されるなど公文書管理の在り方も批判された。

 森友、加計(かけ)学園や桜を見る会を巡る疑惑について首相は「決着済み」との考えのようだ。安倍路線継承が基本とはいえ、「負の遺産」まで無批判に引き継ぐ姿勢には疑問を禁じ得ない。

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