魚焼きの少女は、大名を愛する建築家に 松岡恭子【動画あり】 (2ページ目)

西日本新聞 加茂川 雅仁

 建築家とは「人が生きる環境をよりよくする仕事」。その考えに立った初めての大仕事が、北九州空港の連絡橋だった。単なる橋ではなく、人々が集い親しむ「公園」をコンセプトにした設計は、2006年に土木学会の著名な賞を受けた。

 米ニューヨークや台湾で仕事をし、福岡市に戻った時、天神の渡辺通りにあった「秀巧社ビル」解体(08年)を知ってショックを受ける。日本を代表する建築家、磯崎新の設計だったからだ。

 「貴重な建造物を守るには、建築ファンを増やすしかない」。09年から福岡に残る建築物の見学ツアーを開催。3年間で延べ3千人が参加した。理事長を務めるNPO法人は、その活動を引き継いでいる。

 それをさらに発展させたのが、今回の「One Kyushu ミュージアム」だ。大規模再開発事業「天神ビッグバン」に関わった経験からも、都心の街づくりに危機感を覚えている。

 「リモートワークが広がればオフィスが減り、ネットショッピングの普及はリアル店舗の数を減らすのではないか。人の交流が減って、都心の存在価値が薄れていくかもしれない」

 自身が仕事や生活の拠点とする大名地区でも、空き店舗は増えつつある。その数カ所を短期で借り、九州の魅力を発信するミュージアム(博物館)にしてしまおうというのが企画の意図。そこには、従来にはない「仕掛け」をつくった。

 焼き物のほか、お茶やワインなど九州の産品を展示し、街を回遊するきっかけにする。ただし、提供するのは作り手や産地の情報だけ。販売はしない。産地に足を運んだり、オンラインショップで購入したりしてほしいからだ。さらに「三右衛門」のようなトークイベントを配信し、親しみや共感を持ってもらう。

 まさに、リアルとネットを組み合わせた社会実験-。四つ目の顔である一般社団法人は、そのために今年立ち上げた。

 幼い頃を過ごした祖父母の旅館のように、さまざまな人が集まり、交流する都心。その吸引力は「大きなビル」ではなく「文化」にこそあると、松岡は確信している。

=文中敬称略

(加茂川雅仁)

焼き物の「三右衛門」をオンラインで結んだトークイベントを開いた松岡恭子さん(右から2人目)

 

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