40年所蔵、魚の化石は淡水魚の新種 いのちのたび博物館元学芸員発表

西日本新聞 北九州版 壇 知里

調査重ね専門誌に

 北九州市立いのちのたび博物館(北九州市八幡東区)が所蔵してきた魚の化石が、淡水魚の新種であると元同館学芸員の籔本美孝さん(67)が7月に専門誌で発表した。館に就職した25歳の頃から興味を抱き、少しずつ資料を集め調査を重ねて40年余り。「心底感動する標本に出合う瞬間が長年の研究を支えてくれた」と話す。化石は同館で11月27日まで展示する。

 この化石は1970年、長崎県壱岐市の長者原岬で、同館の前身となる市立自然史博物館の初代館長が発見。開館当初の81年から所蔵している。博物館の開館準備が進んでいた78年、大学を卒業して就職した籔本さんは、所蔵庫で化石標本を見つけた。ケツギョ科の新種ではないのか-。証明に挑んだが、当時は先行研究が少なく手掛かりが見つからなかった。

 そこから地道な資料集めが始まる。淡水魚の研究で先行する中国で論文が発表されるたびに取り寄せたり、実際に中国に飛んで化石の標本を観察したり、頭の片隅には常にこの化石があった。

 進展したのは数年前。国立科学博物館(東京)で、同じ新種とみられる魚の化石標本を顕微鏡で観察しているとき、現生種とは明らかに異なる小さな骨を見つけた。「この発見には感動した。頭の中で証明の道筋がすっと描けた」。それから研究を本格化し、背びれの数や尾舌骨の形が現生種と異なることを次々に立証。約1500万年前の中新世中期に日本に生息していたケツギョ科ケツギョ族の新種と結論づけた。生息地から「イキムカシケツギョ」と命名。論文を発表すると、日本古生物学会が発行する学術雑誌の表紙を飾った。

 これまでケツギョ族の起源は中国で、大きな湖に生息するとされていたが、起源が日本である可能性や、大きな湖が古代日本にあった可能性などさまざまな仮説が生まれたという。

 博物館の所蔵庫には正体不明の化石がまだ複数残っているという。新種の証明に挑めば、また長い時間が要る。「研究は地道だけど、あの感動の瞬間があるからやめられません」とほほ笑んだ。 (壇知里)

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