鉄道自動運転へ視界良好 前方監視センサー開発進む 半導体商社セミナーから

 人工知能(AI)を活用した自動運転は、何も自動車業界の“専売特許”じゃない。鉄道の世界でも実用化に向け技術やシステムの開発、実証実験が進んでいる。半導体商社のマクニカ(横浜市)が開いたオンラインセミナー「鉄道業界における『自動運転』向けテクノロジーの活用について」では先端技術の数々が紹介された。大量輸送を担う、もう一つの自動運転の未来に触れた。

 「運転手は君だ 車掌は僕だ」。童謡「電車ごっこ」で歌われた光景が、将来は見られなくなるかもしれない。鉄道会社の中には、乗務員不足を補うために自動運転の導入を視野に入れて始動したところもある。

 無人は実用化

 もちろん鉄道の無人自動運転は既に実用化されている。運転操作を行わない乗務員が乗るケースを含め、ゆりかもめ(東京)、ディズニーリゾートライン(千葉)、リニモ(愛知)、ニュートラム(大阪)などの路線が営業運転を行っている。

 ただしこれらの路線は全て高架橋やトンネルになっている。踏切はなく一般の人が線路に近づくことは、ほぼできない。駅のプラットホームもホームドアが設置され、人と線路が完全に分離されている。いわば自動運転用に「専用設計」されているのだ。

 一方、レールの上を走り、道路と交差した踏切があり、路線のそばに人家がある「普通の鉄道」の場合、自動運転の導入はハードルが高い。踏切での人や車の誤進入、看板や建物の一部が線路上に落ちるなど不意のアクシデントの発生に対応しなければならないからだ。

 情報を正確に

 マクニカのオンラインセミナーでは、列車の前方を監視するソリューション(問題解決の方法)が示された。LiDAR(ライダー)やステレオカメラとセンサーを組み合わせ、前方の情報を早く正確に得るシステムである。ライダーは光を使って離れた物体の距離や方向を測定する装置のこと。ステレオカメラは2台のカメラの視差(見え方の違い)を基に空間の奥行きの情報を得るもの。

 自動車の自動運転も、ステレオカメラやミリ波レーダーなどのセンサーが「目」となって前方の車両や通行人、道路の白線や標識などを把握する。列車もセンサーが同様の役割を果たすが、「ブレーキをかけて止まるまでの制動距離が長い鉄道は、自動車より長い物体の検出距離が求められます」とマクニカの竹内崇道さんは言う。

 同社が例示したBARAJA社のライダーは、反射率10%(対象物から反射して返ってくる光の量が少ない状態)でも240メートル先の物体の検出が可能という特性を持つ。薄暗い中でも遠くまで状況がつかめるわけだ。Cepton社のライダーは物体検出の反射率は30%ながら、距離は300メートルまで伸びた「長距離検出特化型」。また4Kセンサーを使用したITDLab社のステレオカメラでは高解像度の画像に加え、多くの距離を示す点群データが得られるなど、ライダーとは異なる特性のセンサーを備える。鉄道用にカスタマイズ(最適化)されたセンサーが相次いで開発され、自動運転は“視界良好”になりそうだ。

 駅や踏切でも

 セミナーでは、駅のプラットホームや踏切での監視ソリューションの紹介もあった。マクニカは、ともにライダーやステレオカメラを使ったシステムを提案した。例えばホームドアの近くにステレオカメラを設置することで、乗客や荷物のドアへの挟み込みなど危険防止が可能となる。ステレオカメラがドアの開閉状況や、通過する人や物を高速処理した画像で検知する仕組みで、昇降時の安全性が高まるという。個人的にはホームドアがないプラットホームでの転落防止などにも応用できるのではと考えるが、実現するだろうか。

 踏切でもライダーを使った監視で、誤進入防止などにつなげる。暗い環境でも検知の精度が高く、リモート操作での安全確保に期待ができる。

 変わらぬ責務

 鉄道は大量輸送が可能で定時性や安全性が高く、地球環境への負荷が比較的少ない点が、他の交通機関にはない特徴だろう。将来の人手不足に対応して、自動運転への期待が高まるのも当然といえる。安全であることは大前提。安心で、信頼できる鉄道運行は自動運転でも変わらない責務だといえる。それを支える技術は、実現に向け日々アップデートされている。 (塩田芳久)

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