沖縄戦を舞台にした古処誠二さんの小説…

西日本新聞 オピニオン面

 沖縄戦を舞台にした古処(こどころ)誠二さんの小説「接近」に次の一節がある。「標準語は、より日本へ近づくために沖縄県民が習得した言語だった」

▼沖縄の学校ではかつて、子どもたちに標準語の使用を励行した。沖縄言葉を話した子には罰も加えている。「方言札」と書いた板を首から下げさせ、見せしめにしたという

▼島から出た若者の中には、沖縄言葉をさげすまれて挫折する者もいた。学校での方言撲滅はそんな悲劇を防ぐ目的もあったのだろう。けれど古処さんは「本土への同化政策であり、琉球処分以降の苦悩が生み出した自己防衛の手段でもあった」と抑圧の裏側を書く

▼いま中国の小中学校で、少数民族の言語教育が制限されていると本紙にあった。国語の授業で全国統一の中国語教材を使用。道徳や歴史の教材も中国語版に替え、教員への漢語研修も強化するという。「指導部による少数民族の漢族同化政策が背景」と記事は指摘する

▼内モンゴル自治区では「母語のモンゴル語を守ろう」と抗議運動が発生。通学や授業のボイコットも起きたそうである。中国の憲法は民族語を使う権利を保障する。けれど衣の下に鎧(よろい)がくっきり見えてはいないか

▼「生まりジマぬ 言葉 忘ねー、国 忘ゆん」。沖縄にはこんな金言があるそうだ。生まれ育った地域の言葉を忘れるのは古里を忘れ祖先や親兄弟を捨てたも同然、と。中国の偉か人に教えてやりたか。

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