等身大の高松凌雲像を制作 小郡市の彫刻家灰塚さん

西日本新聞 筑後版 大矢 和世

赤十字運動の先駆け

 福岡県小郡市在住の彫刻家、灰塚みゆきさん(34)が、11月1~8日に自宅近くの市指定有形文化財「旧松崎旅籠(はたご)油屋」(同市松崎)で開く個展「灰塚みゆき彫塑(ちょうそ)作品展」に合わせ、新作「立志凌雲(りょううん)像」を完成させた。地元ゆかりの偉人、高松凌雲をほぼ等身大で表現した作品だ。

 高松は幕末期、現在の小郡市古飯から上京して“最後の将軍”徳川慶喜の奥医師(医官)を務めた。パリ万博の代表団に伴って渡仏すると、「自由・平等・友愛」の精神と貧民に対する無料診療を知った。帰国後、箱館戦争(五稜郭の戦い)に参加し、敵味方を問わず傷病者を手当てしたことから「日本の赤十字運動の先駆け」と言われている。

 灰塚さんは市担当者から高松凌雲像の制作を提案されたという。「でも実は凌雲さんのことを知らなかった」と明かす。

 制作に当たり、資料を読み込むなどして幕末の空気感を想像した。「せっかく油屋での展示だから、そこに置いて良さが引き立つ作品にしたい」。高松が地元を後にし、油屋が面する薩摩街道を上っていく旅姿を粘土で肉付けしていった。江戸を遠望するかのような視線には、その後世の風格をも漂わせる。

 灰塚さんは佐賀大出身。入学当初は油彩画を描いていたが、彫刻との出合いが転機になった。彫るだけでなく、特に粘土などで肉付けする「塑造(そぞう)」に魅了された。「彫刻材の質感に左右されず、完成像に向かって、どう作るかは自分次第。もっとやってみたいと夢中になった」。まるで空間に、粘土という“画材”で立体を描くような営みだ。

 さらなる精進のため筑波大大学院に進学。東京・銀座でのグループ展や各種公募展に参加し、8年前に帰郷。日本最大級の公募展「日展」でも複数回入選し現在は会友となっている。

 今後も人間の肉体を中心に制作するつもりだ。「学生時代、ダンサーをモデルにした際に『これを形にできるか?』という挑発を感じ、創造と向き合った。人間を作り、結果、人間以上の何かを表現できたなら」。骨組みに手指で粘土を押し付け、命を吹き込む。

(大矢和世)

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 ギャラリートークを11月3日午後1時、同2時に開催(各10人、要予約)。入場無料。2日休館。NPO法人小郡市の歴史を守る会=0942(80)1920。

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