【特派員オンライン】韓国の歴史と死生観

西日本新聞 国際面 池田 郷

 俳優の竹内結子さんの急死を受けて、主演映画「いま、会いにゆきます」がヒットした韓国では主要紙が28日、ファンの悼む声を添えて詳しく報じた。偶然、私も同日付の本紙に、新型コロナウイルスの流行が続く韓国で若年女性の自殺が増えたという記事を書いたばかり。複雑な思いで悲報に接した。

 韓国の自殺率は経済協力開発機構(OECD)加盟国で最悪だ。要因は多様だが、自ら命を絶つ行為が他者に強く抗議する手段とされてきた独特の歴史の陰もある。韓国では1945年までの日本統治に抵抗して殉死した独立運動家は「烈士」と呼ばれ、尊敬される。解放後は、権力の横暴に抗議して自らに火を放つ若い民主化運動家が相次ぎ、やはり烈士と英雄視された。

 そんな行動は国民感情を動かし、87年に軍事政権から民主化を勝ち取る原動力になった。一方、命を賭す行為を美化する死生観をもたらした。退任後に疑惑が浮上した盧武鉉(ノムヒョン)元大統領も死を選んだことで、後にカリスマ化したとの指摘がある。政治家や芸能人に同様の不幸が続く背景には自尊心を重んじる国民性もありそうだが、命を犠牲にする結末は何ともやるせない。

 (ソウル・池田郷)

 

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