コロナ禍「本を売ることが最後の希望」福岡・久留米市

西日本新聞 筑後版 玉置 采也加

客足激減、歯を食いしばる

 福岡県久留米市通町のバー「La Mer」のオーナー田中英里さん(47)が、26年間書きためたエッセーをまとめた本の販売に力を入れている。故郷を離れて挑戦した店は、新型コロナウイルスの影響で苦境に立つ。それでも30年近く住み続けた久留米に愛着がある田中さんは「コロナなんかであっさりつぶれてたまるもんか。本が売れればここにいられるんだから」と前を向く。

 田中さんが地元の島根県を出て久留米市に来たのは18歳の時。進学のためだった。学生、派遣社員、ライターなどを経て26歳でバーをオープン。「多くの人がふらりと足を運べるように、と安価でお酒を提供してきた。毎日が自転車操業」と笑う。

 昨年8月に開業20周年を迎えたことを記念して、エッセーの出版を決めた。脳腫瘍のため入院した話、「生き仏」と呼んで愛してやまなかった祖母の死など、久留米での生活をつづったものだ。「トイレに置いて読むくらい気楽で、読んだ人がふふっと笑える本がいい」と、タイトルは「ボスエリ日記 うんこのお供」(A5判、1500円)とした。

 コロナウイルスの影響で、経営状況は出版時から一変した。客足は激減し、給付金をやりくりしても生活は苦しくなる一方だ。店をたたんで島根に帰ろうかと悩むことも少なくない。それでも「続けてほしい」という常連客らからの思いに支えられながら、歯を食いしばる。田中さんは「大好きな久留米を離れたくない。本を売ることが最後の希望」と力を込めた。 (玉置采也加)

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