九州本土と天草諸島に囲まれた八代海は別名を…

西日本新聞 オピニオン面

 九州本土と天草諸島に囲まれた八代海は別名を不知火海。海上に現れる「不知火」がその由来だ。近づけば遠ざかる不思議な火の正体は蜃気楼(しんきろう)の一種とされる

▼その名は大相撲の横綱土俵入りの型に残る。雲竜型と並ぶ不知火型。熊本出身の名横綱不知火光右衛門にちなむ。昔から相撲が盛んだったこの地から、新たに歴史に名を残す力士が

▼熊本県宇土市出身の関脇正代関。今の優勝制度ができた1909年以降、同県出身力士として初めて幕内優勝を果たした。きょう大関昇進が決まる

▼かつては「ネガティブ(消極的)力士」と呼ばれた。対戦したい相手を問われて「誰とも当たりたくない」と答えた。劣勢になると勝負を諦めたようになり、年下に番付で抜かれても淡々としていた。そんな正代関が変わった。4年前の熊本地震がきっかけだった

▼無残な姿となった故郷。実家も被災した。「すごく悲しくなって、逆に頑張らなくちゃなという気持ちになった」。避難所や仮設住宅を何度も見舞った。そして思ったのは「相撲で活躍することが一番喜んでもらえることなんじゃないか」

▼熊本はこの夏も豪雨災害に襲われた。郷土力士の活躍に励まされた被災者も多かろう。これまで故郷から力をもらってきた正代関は「少しだけ恩返しができた」と。近づけば遠ざかっていた優勝と大関に手が届いた。さあ、次の目標は不知火の名を持つ郷土の大先輩だ。

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